Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2011年7月号 > 世界に広がる日本の地熱発電技術(仮訳)

Highlighting JAPAN

前へ次へ

特集次世代エネルギーへの挑戦

世界に広がる日本の地熱発電技術(仮訳)

English

近年、地熱発電は有望な新しいエネルギー源として期待されてきている。日本の技術が大きく貢献しているこの分野について、ジャパンジャーナルのエームズ・パムロイが報告する。

地球内部のマグマから放出される熱は地中の水を熱し、その熱せされた水は「地熱貯留層」に貯えられる。この地熱貯留層に向けて井戸を掘り、その蒸気をタービンに導いて電気を起こすのが地熱発電だ。地熱発電は、発電時に二酸化炭素(CO2)を発生せず、天候にも左右されず、安定的なエネルギーを供給できる数少ない発電方法として、近年、注目を集めている。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2010年4月に発表した地熱利用に関する報告書においても、「地熱エネルギー開発を進めることは、気候変動の緩和に非常に適している。なぜなら、それは、ベースロードパワーを提供するからだ」と述べられている。

現在、日本を含め世界の24カ国で地熱発電が行われている。総発電設備容量が最も多いのがアメリカ、2位がフィリピン、3位がインドネシア、4位がメキシコだ。地熱発電による全世界の合計出力は、1万MWを超えているが、今後5年間でさらに拡大していくだろう。

このように世界で稼働している地熱発電で活躍しているのが、日本の技術である。世界の地熱発電による発電量の7割以上が、富士電機、三菱重工、そして東芝といった日本企業の設備によって供給されている。

地熱発電で利用する熱水や蒸気は高温であるだけではなく、硫化水素ガス等腐食要因である成分が含まれている。そのため、腐食・疲労にも耐えうる設備であることが要求される。日本企業の強みは、その耐久性の高さだ。

可能性を広げる

このように世界各地で地熱発電の開発が進む中、富士電機は、昨年5月、1基としては世界最大の地熱発電施設であるナ・アワ・プルア地熱発電所をニュージーランドで完成させた。年間140 MWという発電容量により、住宅約4万5千棟分を賄うことができる。

富士電機の地熱発電市場の開拓は、1979年にまで遡る。地熱発電プロジェクトの一環としてエルサルバドルで建設されていたプラントへタービンを供給したことが始まりだ。1980年代以降は、米カリフォルニア州を中心に地熱タービン発電機設備の納入を行い、その後1990年代に発電所工事の一括請負を行うことができる企業へと変貌を遂げた。

この10年で、世界で新たに設置された地熱発電の合計出力のうち、富士電機の地熱発電の合計出力は約950MWであり、45%にあたる。

「アイスランドは火山が多く、地熱発電が盛んで、国の総電力の4分の1を地熱発電で賄っている地熱先進国です。最近では、我が社がアルミ精錬のための地熱発電を利用するプラントを建設する計画があります」と富士電機のエネルギー事業本部長の山田茂登氏は言う。近年、アイスランドはヨーロッパからのアルミ精錬工場の誘致に力を入れており、海外からの投資を歓迎している。アルミの精錬には大量の電力を必要とするが、アイスランドはボーキサイトを輸入し、低価格の地熱や水力発電を使って精錬して、海外に輸出しているのだ。

富士電機が力を入れている地熱エネルギー技術の一つが「バイナリー発電」システムである。本来、地熱発電は地下からの150°C以上の蒸気を利用して発電用タービンを回すが、「バイナリー発電」は沸点が低い液体(ペンタン:沸点36度)を使うことで、より低い温度の蒸気と熱湯を利用した発電を可能としている。世界的にもこのバイナリー発電が広がりつつある。九州の大分県西部の筋湯温泉にある、日本国内最大の地熱発電所である九州電力八丁原地熱発電所でバイナリー発電により2,000kWの発電を行っている実例がある。

「この技術を使うことで、地熱発電の可能性は今後、さらに広がるでしょう」と山田氏は言う。

日本の地熱発電の総発電設備容量は世界で8位であるが、資源として利用可能と見られる地熱資源ポテンシャルはインドネシア、アメリカに次いで3位だ。これまで、コストの高さや、開発が制限されている国立公園内に地熱資源があるために、地熱の利用が十分でなかった。しかし、今年になり、環境省が地熱発電の推進に向けた規制緩和の検討を開始、九州の熊本県小国町では、バイナリー発電を想定した調査が今年度中に開始されることが決定、また、大手石油企業が、秋田県と北海道で地熱発電の共同調査を行うことを発表するなど、日本国内での地熱発電の利用の動きも進んでいる。

前へ次へ