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Highlighting JAPAN

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特集次世代エネルギーへの挑戦

風を力に(仮訳)

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再生可能でクリーンなエネルギーとして注目されている風力。これを活用した風力発電の普及への期待が高まっている中、九州大学応用力学研究所の大屋裕二教授は、風車の大きさが同じでも、発電能力が2〜5倍になる高出力の「風レンズ風車」という全く新しいタイプの風力発電装置の開発に成功した。

風車による発電量は風速の3乗に比例する。水力発電がダムによって水のエネルギーを集中させることで成立するように、風力発電においても構造物の流体力学的性質をうまく利用して風を増速させ、風エネルギーを局所的に集中することが出来れば、発電量は飛躍的に増加することになる。大屋教授はこの点に注目した。

「ディフューザ部を長くすると、入り口付近の風速は速くなりますが、発電装置の規模が大きくなり、製造コストも高くなってしまいます。私は、短いディフューザで風速を速くする方法はないか、ということをまず考えました。そこでディフューザの出口周囲に『つば』と称する風の流れを遮る渦形成板を取りつけてみたのです。通常、風力発電では風に対して妨害物になるようなものはつけないのが常識ですが、『つば』の設置は、まさにその逆転の発想でした」と大屋教授は言う。

風車翼を囲むように『つば』を取りつけることによって強い渦が形成され、その先に低圧部が生成される。すると風は低圧部をめがけて流れ込んで来て、ディフューザの入り口付近では非常に大きな増速効果が得られる、というのが風レンズ風車の基本的なメカニズムだ。

すでに実用試験として、九州大学がある福岡県内だけでも25基の風レンズ風車が稼働しており、期待通りの電力供給量を実現している。また、今年11月には、広大な日本の水域を利用した高密度洋上発電ファーム実現の第一歩として、博多湾に風レンズ風車を設置した長径18m程度のフロートを浮かべることが計画されている。また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が中国甘粛省で実施している「高効率風レンズ風車を利用した砂漠の潅漑・緑化」プロジェクト(2007〜2008年度)でも6基の風レンズ風車が現地に設置され、この風車が発電した電力を用いて、1日20㎥の水を自動的に潅漑するシステムが構築された。

また現在、強風時の運転が困難(必要以上の強風の影響で風車にトラブルが発生する可能性がある)という風車の弱点を検証するため、環境省の支援の下、強風地域として知られる英国・スコットランドにおいて、野外試験が行われている。

「あとは、風レンズ風車の大型化を考えた場合、強度、耐久性のある構造素材が必要です。現在、従来の炭素繊維材料(CFRP)よりはるかに強いスーパーカーボンファイバー(第2世代CFRP)の採用を検討しているところです」と大屋教授は、更なる性能向上に取り組んでいる。

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