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Highlighting JAPAN

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特集「伝統」と「現代」の融合~Cool!Japanを担う人々

折り紙を生き物へ(仮訳)

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「折り紙」という日本語は、折り紙遊び表す言葉として世界中に広がっている。東日本大震災発生後には、日本の被災者を元気づけようと、世界各地で折り鶴が折られた。

折り紙は四角の紙を切らずに作らなければと考える人は多い。ただ、複数の紙を使ったり、はさみを使った折り紙もある。世界に広がった折り紙は、近年、技術や理論が加速度的に進み、今や、展開図を設計するPC用ソフトまで誕生している。折り紙を研究する、あるいはアート作品として作る数学者や物理学者も世界には多い。

こうした中、独自の芸術性に富んだ作品を発表し続けている折り紙作家がいる。作家・演出家・俳優でもある西田シャトナー氏だ。西田氏の折り紙のモチーフはすべて生物で、どれもが今にも動き出しそうな躍動感に満ちている。

「折り紙を折っていく過程は、生物の発生のそれとよく似ているんです。単細胞である1枚の紙から様々な工程と進化を経て、生物が誕生していく。僕の折り紙は、いわばその進化の追体験なんです。生物への観察力はもちろんとして、僕は生物の気持ちまでも折り込みたいと思っています」

西田氏は、設計的手法を極力使わず、1枚の紙を、全く切ることなく、指と紙の無心のやりとりを通して作品を創り出していく。それは「自分ではなく、紙にものを創らされている感覚」だと西田氏は語る。氏の作品独自の陶芸品のようなぬくもりや生命感は、おそらくそうして生み出されるのだろう。

西田氏は自身のHPで多くの作品を発表している。作品に対して、海外からも「素晴らしい!」「まるで生きているようだ!」といった反響が多数寄せられているという。

西田氏は、最近、「東日本大震災の被災者の心の中に花を届けたい」という願いを込めて新たな作品「花をくわえた小鳥」を折りあげた。「僕はずっと、生物をリアルに、生命観溢れるように、折ることに取り組んできました」と西田氏は言う。「しかし、震災を機に、その気持ちが変わってきました。これからは、僕が折るまではこの世界に存在しなかった何かを形にしいたいと思っています」

西田氏はこの作品の画像を、東日本大震災の被災者支援のための携帯電話募金サイトに提供した。このサイトでは、アニメ、写真、小説などアーティストの作品を携帯電話でダウンロードすることができ、その代金105円が、東日本大震災の被災者へと寄付される仕組みになっている。

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