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Highlighting JAPAN

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特集「伝統」と「現代」の融合~Cool!Japanを担う人々

海外に広がる日本食(仮訳)

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農林水産省は、毎年、「日本食海外普及功労者」を顕彰している。2010年の受賞者である、日本食レストラン「Kei」のオーナーである武藤慶子氏に、ジャパンジャーナルの澤地治が話を聞いた。

クウエートでは、数年前から日本食がブームだ。以前は、数店しかなかった日本食レストランが、現在では大小合わせて20軒以上ある。そうしたクウエートにおける日本食普及のパイオニアが、首都クウエートのマリオットホテルに店を出す「Kei」だ。

「私の父は、クウエートで海洋油田に関する事業を行っていましたが、1980年にクウエート初の日本食レストランを開業しました」と「Kei」のオーナーである武藤慶子氏は言う。「当時、お客様は日本人や欧米人など、在留の外国人がほとんどでした。日本食が非常に珍しかったこともあり、日本食を食べることは一種のステータスシンボルでもあったようです。」

武藤氏は1980年代中頃から、日本とクウエートを行き来しながら、父の仕事を手伝うようになった。2003年に父が死去したことをきっかけに、武藤氏が事業を引き継いだ。

現在は、寿司、天ぷらなど本格的な日本料理を提供する店を、クウエートで2店舗、バーレーンで1店舗を営業している。1980年の当時と違うのは、店を訪れる人の約90%がクウエート人である点だ。

『Kei』では、2009年からは、日本の果物の紹介、販売を開始し、また、2010年秋にはクウエートのKeiマリーナ店に隣接する和カフェ・パーラーをオープンした。

しかし、東日本大震災に伴う原子力発電所事故の影響で、クウエートでは4月から日本食材全てが輸入禁止となっている。そのため、現在『Kei』では料理に必要な醤油、味噌、海苔などの食材を在庫で賄っている。

武藤氏は「輸入禁止が長引くようであれば、近い将来、これらを他のアジア産に切り替えざるを得ません。食材を替えることで、味の変化が生じることが心配です」と言う。

こうした中で、武藤氏は、クウエートで行われる震災救援チャリティー活動を通して、被災地を支援している。例えば、宮城県で被災したクウエート人家族への支援の一環で、『Kei』は、被災者の家族が一時、クウエートに帰国した際、彼らに食事の提供をしている。

「震災後多くのクウエート人やその他外国の方々から日本へのお見舞いの言葉を数多くいただき、また私を励ましてくれました」と武藤氏は言う。「幸い、震災の影響で、お客さんの数は減っていません。今後も、『Kei』と和カフェを日本のフードカルチャーの発信地、さらには文化交流の拠点としていきたいと思います」

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