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Highlighting JAPAN

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特集「伝統」と「現代」の融合~Cool!Japanを担う人々

船大工~木造自転車を可能にした匠(仮訳)

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江戸時代から貯木場や船大工の町として知られる東京都江東区の木場に、マホガニー製自転車の製作を手掛ける佐野末四郎氏の工房がある。

佐野氏は200年以上も続く船大工の継承者だ。13歳から図学と造船設計を本格的に学び始め、15歳になると外洋ヨットの建造に着手、たった一人で3年間かけて完成させている。その船は米国の木造船専門誌で紹介され、やがて佐野氏の高度な技は敬意と称賛を込めて“SANO MAGIC”と称されるようになる。

佐野氏が代々受け継いできた造船技術を活かし、マホガニー製自転車の1号機を製作したのは、2008年のことだった。

「人の真似をしても上には昇れないと、よく船大工の7代目頭領だった祖父に言われました。だから、僕は絶対に人真似はしない。マホガニーの自転車を作ったのは、世界で誰もやっていないことを形にしたかったからです」

この自転車が一躍脚光を浴びるようになったのは、2009年にドイツで開催された世界最大級の自転車ショー「ユーロバイク」に3号機を出展してからのことである。カーボン製自転車と同重量でありながら、まるで芸術品のように美しく、未だかつてない走行フィーリングを持つマホガニーの自転車は、人々を驚かせた。

「マホガニーの特性を活かしてフレームに粘りを与えることで、跳び箱の踏板と同じように応力を利用して踏力をアシストすることができる。乗った人はみなさん、電動アシストみたいに楽で速いと言いますよ」

機械部以外の全パーツはすべて0.8mm〜1.0mmのマホガニー材を熱と水を加えて手曲げし、接着剤で何層にも貼り合わせてから木型に押し当てて成形する。ハンドルも中空で、ノミで丹念に削られる。最軽量モデルの重量はわずか7.2kgに過ぎない。製造できるのは1年間にわずか3台。200万円という価格にもかかわらず、予約は2年先まで埋まっている。

その芸術性が高く評価され、この9月から来年1月まで、佐野氏の作品のうち1台がロンドンの国立ヴィクトリア&アルバート博物館で展示される予定だ。

「マホガニー自転車を作ることで新たに培った技術を、いつか超軽量の木造船建造に活かしたいとも思っています」佐野氏はこう語る。

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