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Highlighting JAPAN

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特集「伝統」と「現代」の融合~Cool!Japanを担う人々

クール・ジャパンを世界に向けて(仮訳)

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クール・ジャパンの展開について議論を重ねてきた経済産業省の「クール・ジャパン官民有識者会議」は5月、「新しい日本の創造—『文化と産業』『日本と海外』をつなぐために—」を発表した。有識者会議の座長を務めた福原義春資生堂名誉会長に、東日本大震災後における「クール・ジャパン」の展開について、ジャパンジャーナルの澤地治が話を聞いた。

──「新しい日本の創造」の中で、「日本的創造」という言葉がございましたが、その意味をお聞かせ下さい。

福原義春:私は「日本的創造」とは、異なる性質のものを大きな概念の中に取り込んで、新たなものを作る方法だと考えています。言わば、「ハイブリッド」です。例えば、5〜6世紀に日本は中国から漢字を取り入れましたが、漢字を文字としてそのまま使うのではなく、漢字の音を当てはめて、日本古来の倭語(やまとことば)を表記する「万葉仮名」を生み出しました。

また、明治時代(1868-1912)にも西洋の文化を導入し、日本独自の技術や製品を作り出しました。例えば、資生堂が明治時代の初めに、日本で西洋風の化粧品を売り出した際、香水のボトルやラベルにその頃、東洋的な美術様式を活かし、パリで流行していたアール・ヌーボーのデザインを取り入れました。しかし、そのまま単にデザインを使うのではなく、花や草をモチーフとする唐草模様など、日本の伝統的デザインの要素も加えることで、「日本化」させました。

これも、今で言う「クール・ジャパン」の一つの形だったと思います。伝統文化を単に保存するだけではなく、そこに現代的な要素を加えることで、クール・ジャパンが生まれるのではないでしょうか。クール・ジャパンというとマンガやアニメが代表的ですが、この中にも何らかの伝統的な日本文化の要素が含まれているので、外国人にも人気があるのだと私は考えています。

──東日本大震災からの復興の中で、文化の果たす役割は何でしょうか。

東日本大震災の後、東北では、祭りなどの地域の伝統文化が復興のシンボルとなっています。私は、より良く生きたいと願う人間の創造的行為が文化であると考えます。それゆえ、文化は人々の心に前向きの活力を与えてくれます。

昨年、宮城県の南三陸町では「きりこ通りプロジェクト」が行われました。地域に住む20〜30代の女性が家々を回り、人々の思い出や人生のエピソードを聞き、それをきりこで表現し、目抜き通りの約1キロ、90軒の軒先を飾ったのです。この現代版のきりこの製作活動を通し、住民は自分達の創造性、地域の魅力を発見しました。しかし、まさにアートによる地域作りが実を結びつつあった時、東日本大震災が起こったのです。プロジェクト関係者の多くが犠牲になりましたが、残った人々は、きりこプロジェクトを続けたいという強い気持ちを持ち続けているそうです。こうした人々が町の復興の原動力になると思っています。

──クール・ジャパンを担う人材を育てるには、どのようなことが必要でしょうか。

政府、自治体、企業の役割としては、人材を育てるための「場」を作ることです。例えば、8月から開催される横浜トリエンナーレはその「場」の一つだと思います。林文子横浜市長は「横浜の活性化のために文化は重要」という観点から、横浜トリエンナーレをバックアップしています。横浜市だけではなく、国際交流基金や文部科学省も支援をしています。これまで3回行われた横浜トリエンナーレは、会場が幾つかに分散しておりましたが、今回は横浜美術館を中心に開催されます。多くのアーティストの作品が集中的に展示されることで、新しいクール・ジャパンの姿を演出する場となるのではと期待しています。

横浜トリエンナーレでは、震災の影響で参加を取りやめる海外のアーティストもいたそうです。しかし、それとは逆に、今だからこそ被災者を元気づけようと来日するアーティストもいると聞いています。

クール・ジャパンの創造、そして普及は、日本人だけでは出来ません。世界中の人を巻き込むことで、新しいクール・ジャパンが創造され、より広がっていくのだと思います。

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