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青森県立美術館(仮訳)

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2006年に開館した青森県立美術館は、鷹山ひばり館長によれば「北東北から芸術文化の発信をするため」の美術館だ。ジュリアン・ライオールが美術館を訪れた。

青森県立美術館でまず驚かされるのはそのスケールだ。それは、美術館の建物にしても、その中に収蔵されている多くの展示品にも言えることだ。

そうした趣きにぴったりとはまるのが、第一展示室である高くそびえ立ったアレコホールで、美術館全体の中でも間違いなく私の個人的なお気に入りの一つである。およそ19メートルの4階建ての高さとなっているこのホールは、申し分ない壮大な無地のキャンバスで、そこには同じスケールで作品が展示されている。そして、この美術館を訪れる人で、このスペースを占めるよう選ばれた芸術作品にがっかりする者は誰もいないだろう。

壁面の三方は、巨大な舞台背景画でほとんど完全に覆われている。この背景画は、アレクサンダー・プーシキンが書いた詩である『ジプシー』に基づいており、ニューヨークのダンスカンパニー、バレーシアターにより上演されたバレー『アレコ』のためにマルク・シャガールが1942年に制作したものである。

部屋の真ん中には座り心地が良い椅子がいくつか並べられているのだが、周りを取り囲む作品のスケールから本当に小さく見えてしまう。この椅子に座ると、ゆったりと後ろにもたれてシャガールという本物の天才を肌で感じ取ることができる。

第1キャンバスは、8.8メートル×14.7メートルの目を見張るような大きさで、詩の題材である不運な星のもとに生まれた恋人たちが満月に照らされたビロードのような闇夜を彷徨う姿が描かれている。第二の作品も同じような幻想的な雰囲気があり、典型的なロシアの田園風景の中でバイオリンを手に持ったジプシーの躍り熊と猿が空高く漂うさまが描かれている。

4つの背景画のうち第三番目のものは現在アメリカで展示されているが、シャガールが伝える物語の最終章第4幕は深紅と薄墨の色調で表現されたサンクトペテルブルクで、銀色の馬が空を駆け回っている。この背景画の一角に描かれている墓地は、バレーの主演者たちに定められた運命をほのめかしている。

作品の制作に用いられたとてつもない筆使いと大胆な色調には、圧倒されるばかりである。部屋の静かさもこうした体験感を高めており、ここに何時間座っていても苦にならないだろうが、体験すべきことはまだまだある。

建物の地下二階にあたる別の「ホワイトキューブ」展示室は、奈良美智のインスタレーション、フラフラガーデンといった巡回展示にあてられている。子供のマネキン三体が部屋のウッドフロアに横たわっており、花やプラスチックの玩具に取り囲まれ、壁面のいささか怒った表情のマスクが睨みを利かせている。

素朴な作りの木造建物、幕のついたステージ、それに本や一脚の机、さらに沢山の玩具やマスクが置かれているワーキングルームがさらなる作品群となっている。

建物の中の通路は、正直言って非常に分かりづらかったが、そこはこの美術館がおそらくは最も有名な存在となっている作品の展示スペースにもなっている。それは、建物片側の中庭にたたずむ8.5メートル高の「あおもり犬」の犬の像で、奈良美智がデザインしたものである。

奈良がこの美術館のために制作したもう一つの作品は、外部の「創作ヤード」にある。そこでは、防護壁のような構造物の中の階段を登っていくと八角形の展示スペースに行き着き、『浅い水たまり I』というタイトルのコットン上にアクリルペイントが施された顔の作品が展示されている。

青森県立美術館では、棟方志功、斉藤義重、寺山修司といった青森県とゆかりがある芸術家の作品も展示している。その他にも、アンリ・マティス、パウル・クレー、パブロ・ピカソなどの国際的に名高い芸術家も展示品として加わっている。

美術館全体は近くにある縄文時代(紀元前130世紀〜紀元前3世紀)の古い三内丸山遺跡からインスピレーションを得たもので、建物の巨大な白い覆いがかぶさった土壕をイメージして設計された構造となっている。美術館内部の壁面や床はその多くが土の素材で作られており、古代遺跡との調和が図られている。

最も印象的な色調は、ハーモニーを奏でている白と土の茶色の二色である。

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