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Highlighting JAPAN

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特集東北~震災から半年を迎えて

東北の夏祭り(仮訳)

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日本のリオのカーニバル、ねぶた祭り

「らっせーら、らっせーら」

掛け声を上げながらぴょんぴょんと跳ねながら踊る「ハネト」と呼ばれる踊り子で、道路は満杯だ。鉦や太鼓が鳴り響き、町は熱気に包まれる。その中を、巨大な「ねぶた」がゆっくりと進んでいく。

8月2日から7日まで、青森ねぶた祭りが青森県青森市で開催された。青森ねぶた祭りは東北の夏祭りの中で最も多くの人が集まる祭りだ。今年も青森市の人口の10倍近い、約260万人の観光客が押し寄せた。

ねぶたとは、歌舞伎や歴史物語の人物、想像上の動物、神様などを模した紙製の人形だ。ねぶたの内部にある600から800個の電球や蛍光灯によって、ねぶたはくっきりと浮かび上がる。大きさは、最大で幅約9m、高さ約5m、奥行き約7m。青森ねぶた祭りでは、色とりどりの約40のねぶたが台車に乗り、人力で市内を移動する。

ねぶた祭りにはハネト用の衣裳を着用すれば、誰でも参加することができ、毎年、同じ青森県内の三沢市にある三沢空軍基地の米軍人とその家族をはじめ、数多くの外国人も参加している。青森市国際交流ボランティア協会では、外国人のハネトを募り、参加者への衣裳の貸し出し、着付けを行っている。

「ねぶたとリオのカーニバルにはとても似ていますね!」と、ブラジル人のルイス・レナート・オガサワラさんは言う。「リオのカーニバルも、大きな山車が出て、たくさんの人が熱狂的に踊ります」

オガサワラさんは、4年前に日本人と結婚し、現在は青森市に住んでいる。仕事がダンスのインストラクターだけあって、踊りは板についている。

「ねぶた祭りで踊っていると、自分の生まれ故郷に戻ったような気がします」とオガサワラさんは言う。

踊りに参加するだけではなく、ねぶたの製作に携わる外国人もいる。スペインの公立学校で美術を教えるサンチャゴ・サリナスさんは、昨年に続き今年も、祭りの1ヶ月前に来日し針金でねぶたの形を作る、和紙を針金に貼る、そして、色を付けるといった作業をボランティアで行った。

「10年前、偶然、東京で展示されていたねぶたを見て、その迫力ある造形、美しい色に夢中になってしまいました」とサリナスさんは言う。「紙と針金だけで、ねぶたを作っていることにもとても驚きました」

以来、サリナスさんは青森を頻繁に訪れ、ねぶたの歴史、作り方、造形など、ねぶたに関する文化を研究している。現在、ねぶたに関する論文を執筆中だ。

「今年は東日本大震災の後だったので、友人や家族は来日に反対しました」とサリナスさんは言う。「でも、東北地方でも青森市に被害がないことは、青森の友人から聞いていたので全然心配しませんでした。今、東北『けっぱれ』(東北地方の方言で「がんばれ」の意味)!という気持ちでいっぱいです」

夜空を照らす提灯、竿灯まつり

「どっこいしょ!」

沿道の観客から大きな掛け声がかかる。

太鼓、笛、鉦が鳴り響く中、「差し手」と呼ばれる演者が、長さ12mを超える竹竿に、火の付いたローソクが入った提灯46個がつり下がっている「竿灯」で曲芸を披露する。差し手はバランスをとりながら、重さ50kgにもおよぶ竿灯を腰、肩、額に乗せる。竹竿が大きくしなり、竿灯が大きく揺れると、観客からはどよめきが起こる。

8月3日から6日まで秋田県秋田市で開催された竿灯まつりは、江戸時代を起源とする祭りである。職場や地域の仲間でチームを作り、市内の道路でチーム毎に妙技を披露する。竿灯の数は250本以上にのぼる。毎年数多くの観光客が訪れ、今年も約130万人が沿道を埋めた。

「県庁の人たちも差し手として参加していますので、応援に来ました」

この日祭りを見に来ていた、ソボレフ・ワジムさんは言う。

「竿灯まつりをゆっくりと見るのは初めてですが、すごく楽しいです。皆さん、なかなかやりますね!」

ロシアのウラジオストック出身のワジムさんは、1年前から秋田県庁に国際交流員として勤務し、通訳や翻訳の他、秋田県内の学校での出前講座といった国際理解活動をしている。3月に東日本大震災が発生した時も、秋田市内で仕事中だった。「ウラジオストックに住む、家族や恋人になかなか電話が通じませんでした。地震からしばらく経ってから、ようやく電話が通じたので、秋田は全然大丈夫なので安心してと説明したのですが、早く帰ってきなさいと言われました。ロシアでは日本全てが地震の被害を受けたかのような報道がされていたそうです」とワジムさんは言う。「そうした報道の影響で、ロシアから秋田に訪れる人が一時減ってしまいました。ただ、現在は回復してきています」

2010年、秋田県はロシア沿海地方(ウラジオストックを中心都市とする地方)と、包括的友好協定を締結した。秋田県とウラジオストックは日本海をはさんで、ちょうど対岸に位置する。こうした地理的な近さを活かし、国際物流をはじめ、農業分野や医療分野で、秋田県とロシア沿海地方は関係強化を目指しているのだ。

「ウラジオストックを走る車のほとんどは、日本から輸入されています。スシも大ブームです」とワジムさんは言う。「私は将来、自分で会社を立ち上げて、ビジネスを通じて、秋田とウラジオストックが互いに利益になる仕事をしたいです」。

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