Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2011年9月号 > 被災地から世界の翼を(仮訳)
東日本大震災によって、被災地の製造業は大きな被害を受けた。しかし、製造現場における迅速な復旧作業により、その生産は急速に回復した。福島県相馬市に大規模工場を持つ、株式会社IHIの事例をジャパンジャーナルのエームス・パムロイが報告する。
太平洋に面する福島県相馬市には、総面積633haの「相馬中核工業団地」があり、木材加工、食品加工、精密機械加工などの国内企業や外資系企業の工場が集まっている。ロケット、発電所、船舶、橋梁などの製造を手掛ける、株式会社IHIもここに工場を有し、航空エンジン、ガスタービン、宇宙機器の部品を生産している。
工場で生産している代表的な製品の一つが、最新型ジェットエンジン「GEnx」の一部であるタービン翼だ。GEnxは、最新鋭旅客機ボーイング787に搭載されていることでも知られている。IHIは、アメリカのGE社を中心に進められてきたGEnxの開発に、共同開発という形で参加してきた。
タービン翼の生産が順調に進んでいた3月、東日本大震災が発生、工場は激しい揺れに襲われた。
「変電設備が壊れ、電力供給が停止、さらに、工場の多くの精密機械が設置位置からずれてしまい、操業を停止せざるを得ませんでした」
とIHIの広報担当者は言う。
「しかし、工場の建物自体に大きな損傷はありませんでした。また沿岸部に位置していなかったので津波の被害も受けておらず、工場の従業員1500名も全員無事でした。私達は、すぐに復旧作業に取り掛かることにしました」
復旧作業は地震翌日から開始された。全国にあるIHIの工場からも、人員が集められた。当初、工場の操業停止により、航空機の生産への影響が懸念されていた。しかし、従業員が復旧作業に集中的に取り組んだ結果、3月末には一部の生産ラインが復旧し作業を再開、さらに5月中旬には震災前の状態と同じフル稼働の状態にまで戻り、現在では、生産の遅れを取り戻すべく生産を行っている。
また、IHIは被災した地域の生活再建にも取り組んでいる。その一つが、相馬市と協力した被災者の職業訓練支援だ。被災地では、職場が津波で流されたことで、多くの人が仕事を失った。その一方で、被災地の瓦礫処理を行うショベルカーやブルドーザーの運転者が不足している。IHIは、そうした状況を改善するために、交通費を含め全額IHI負担で、神奈川県綾瀬市にあるIHI技術教習所に被災者を送り、クレーンやショベルカーなど重機の運転者資格取得を支援している。
「被災者は資格を得ることで、復旧作業に加わりつつ、仕事も得ることができます」とIHIの広報担当者は言う。
この他、IHIグループは福島県や相馬市をはじめとする被災地域の自治体に対して義援金の寄付、生活用水の確保のため非常用浄水装置の寄贈を行っている。
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