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Highlighting JAPAN

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特集世界で活躍する日本人女性

建築で人をつなげる(仮訳)

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数々の賞を受賞している建築グループSANAA (Sejima and NIshizawa and Associates)は、光や開かれたデザインで、世界中の建築家や人々に刺激を与えている。ジャパンジャーナルの澤地治が、SANAAの一人、妹島和世氏に話を聞いた。

2010年、建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を、妹島和世氏と西沢立衛氏の建築家グループ「SANAA」が受賞した。プリツカー賞の歴代受賞者の中で、妹島氏は女性として二人目であった。

同賞審査員は、SANAAの建築を「デリケートさと力強さ、正確さとしなやかさを兼ね備え、巧妙ながら賢過ぎない」と評価している。

同賞審査員からも高く評価された建築の一つが、石川県の金沢21世紀美術館だ。ガラスを多用した円形の建物には正面や裏側といった区別がなく、東西南北4カ所の入口からはどこからでも入場ができる。

「金沢21世紀美術館は、『開かれた建築』の良い例だと思います。建物が周囲の町に向かって開かれおり、人がスムーズに入ることができるようにしました」と妹島氏は言う。「また、建物は完成していますが、作品の展示方法によっても、美術館の印象が大きく変わります」

現在SANAAは、フランスのランス市にルーブル美術館の別館として2012年12月にオープン予定の「ルーブル・ランス」の設計を担当している。この建物にもSANAAの建築の特徴が表れている。建物は全て低層で、エントランスホールは誰もが入れる公共スペースとなっている。また、展示棟のアルミ製外壁は鏡面となっている。壁に周囲の木や芝が映りこむことで、建物が風景に溶け込むような効果を生み出す。

SANAAはパリの老舗百貨店ラ・サマリテーヌの再開発、パリの公営集合住宅建設といったプロジェクトも行っている。その他、ドイツ、中国、韓国、メキシコ、アメリカでも美術館、コンサートホール、オフィスビルなどの建設計画が進んでいる。そのため、妹島氏の海外出張は年20回を超える。事務所では約40名のスタッフが働いているが、その4分の1はアイルランド人、イタリア人、フランス人、アメリカ人など外国人だ。妹島氏の建築に魅せされて海外から多くの建築家が集まってくる。

「例えば、欧米の建築家は、扉を非常に分厚く作り、建物の中と外とを仕切ろうとしますが、日本の建築家は、軽い扉を使って簡単に開け閉めできるようにして、中と外との関係性を保とうとします」と妹島氏は言う。「欧米でも、そうした日本人の感性を取り入れるようになっていることが、私が海外から招待される理由の一つだと思います」

海外のプロジェクトが増える中、妹島氏が今、国内で熱心に取り組んでいるプロジェクトの一つが、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県東松島市の宮戸島の復興支援だ。妹島氏はこれまでに数回、宮戸島を訪れ、地域住民と話し合いながら、町の復興プランを進めている。

「住民の方々と話していると、例え物理的に町が失われていても、彼らの心の中に町がしっかりと残っていることが分かります」と妹島氏は言う。「海と結びついた人々の生活が風景の一部となった、美しい町になればと思っています」

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