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Highlighting JAPAN

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特集伝統と最新技術で守る建築

日本を支える大黒柱(仮訳)

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日本には、古くから受け継がれた伝統的な建築技術が今も残されている。その一方で、最新のテクノロジーを用いた新しい建築技術も次々と開発されている。今月の特集記事では、これらを組みあわせることで生み出される建築物の快適性や美しさ、そして地震や台風などの自然災害に対抗するために日本人が培ってきた高い防災機能を紹介する。

3月11日、東京都墨田区で建設中の東京スカイツリーは、東日本大震災によって揺さぶられた。高さ600メートルを超える最上部は4〜6メートルの横揺れがあったと推定されている。しかし、東京スカイツリーは地震による被害を受けなかった。

東京スカイツリーが激しい揺れにも耐えられた理由の一つが、世界で初めて導入された「心柱制振」と呼ばれる制振システムの働きだ。東京スカイツリー本体の中心部は、約475メートルの高さまで、直径約10メートルの空洞になっている。その空洞部分に、東京スカイツリーを貫くように、高さ375メートル、直径8メートルの「心柱」と呼ばれる鉄筋コンクリート製の円筒形の柱が設置されている。心柱と本体とは、構造的には切り離されているものの、高さ125メートルまでは鉄骨で連結され、それ以上は、ダンパーと呼ばれる、伸縮によって揺れを抑える装置を介して連結している。心柱は、鉄骨主体の本体よりも重く、揺れにくい。そのため、地震や暴風で発生する揺れによって、心柱と本体とは、別々の動きをする。心柱と本体との動きが反対方向であれば、揺れが相殺されるのだ。この心柱制振によって、地震の揺れを最大約50%減らすことができるという。

「心柱」はもともと、日本の伝統的な五重塔の中心部に建てられる柱を指す言葉である。奈良県斑鳩町の法隆寺などに代表される五重塔は、地震での倒壊例がほとんどないと言われる。東京スカイツリーの設計を行った日建設計によれば、最新の制振システムを検討したところ、結果的に五重塔によく似た構造となったため、「心柱」という名を用いたという。

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