Home > Highlighting JAPAN > Highlighting JAPAN 2011年12月号 > 姫路城の大天守修繕(仮訳)

Highlighting JAPAN

前へ次へ

特集伝統と最新技術で守る建築

姫路城の大天守修繕(仮訳)

English

兵庫県姫路市の姫路城では、2009年から5年間の計画で大天守の補修工事が行われている。修理中の今だからこそ見ることが出来る姫路城の建築の魅力を、松原敏雄がレポートする。

姫路城はもともと14世紀に豪族が築いた砦だったと言われている。姫路城は別名、白鷺城(はくろうじょう)と呼ばれている。諸説あるその名前の由来の一つは、真っ白な漆喰の美しい城壁を持つ姿が、白い鷺が飛ぶ姿に見えるためと言われている。

その姫路城郭内最大の建築物で、最終防衛拠点としての機能を果たす、高さ約31メートルの5層の大天守は、17世紀初頭にこの地域を治めた城主によって築かれた。

400年以上の歴史を持つ大天守は、1956〜1964年に8年間に渡る大規模な解体復元工事が行われたが、それから半世紀が過ぎ、屋根や壁面の破損劣化が進んでいたため、2009年から5カ年計画で新たな保存修理工事が行われている。

姫路市が2005年度に実施した大天守の耐震診断の結果、約50年前の解体復元工事によって姫路城には想定以上の強度があることが判明している。新たに24箇所に補強を加えれば、東日本大震災クラスの揺れに耐えられることもわかった。そこで今回の修復工事では一部の床に目立たないように鋼板を組み込み、床組のねじれを防止する補強を行う。また、以前の復元工事ですでに鉄板巻きと支圧板が敷き混まれた柱の頂部には、その一部にさらに鋼板による補強が加えられる。

修理中に風雨から大天守を守るために、大天守全体を覆う素屋根(修復作業を円滑かつ安全に進めるために設けられた建物全体を包み込む建造物)も建設されている。城自体と、その周辺の地面は文化財の一部とされているので、屋根や壁に直接鉄骨を付けたり、地面に杭を打つことができないのだ。また、地盤が素屋根の重さによって歪むことも避けなければならない。そのため、素屋根には、軽量化を追求した鉄骨トラスト構造が採用された。

姫路城の漆喰壁の塗り替えや屋根瓦の葺き直しは、姫路城が完成した約400年前の技がそのまま継承されている。最上部の5層とその下の4層の壁は漆喰と下地をすべて剥がして土壁から塗り直し、1〜3層の壁は下地をそのまま残して表面の漆喰が塗り替えられる。 漆喰塗りひとつ例にとっても、塗る場所によって漆喰の材料も塗りの厚みも異なる。また季節・気温・湿度を考慮しながら、乾ききってから塗り重ねたり湿ったうちに塗り重ねたりと熟練の技が求められる。

また、約8万枚の瓦はすべてが取り外され、一枚一枚じっくり検品・洗浄されたうえで、劣化が進んだものは新しい瓦に交換される。

こうした伝統技術にあえてこだわって修復作業を行っているのは、その貴重な技を後世に継承させていくためでもあるという。

姫路城の見学

大天守は素屋根で覆われ外見こそ見ることは出来ないが、素屋根内部には見学施設が設けられており、観光客は修理の様子を見学することが出来る。エレベーターに乗って見学施設最上階の8階まで上がると、今回の修理の中心となる大天守最上階の屋根修理を、そして、その下の7階からは壁面修理の様子を、ガラス越しに間近に見ることができる。修理期間にしか目にできない景観だけに、連日数多くの観光客が訪れている。

オーストラリアから訪れた20代の女性は、姫路城見学の感想をこのように語ってくれた。

「通常なら遠くから眺めるだけでしょうけれど、屋根の微妙なカーブや剥き出した土壁も間近に見ることができて、この時期に見学に来てよかったと思います。日本の他の城も見ましたが、この姫路城が一番素晴らしかった。本当に貴重な体験でした」

前へ次へ