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Highlighting JAPAN

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特集未来をつくる科学技術

未来の科学技術を担う若者(仮訳)

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世界は今、環境、食料、感染症など様々な脅威に直面している。日本も高齢化、自然災害、エネルギーといった問題を抱えている。こうした国内外の問題に対処し、持続可能な社会を築くために、日本は科学技術の振興に力を入れている。今月号の特集記事では、私たちの未来の豊かな生活を作り出すことが期待されている、様々な科学技術を紹介する。

午後4時、埼玉県川越市の川越女子高校の生物室に、授業を終えた生徒達が集まってくる。遠くにマンドリンクラブの生徒が奏でる音楽が聞こえる中、生徒達は各自で、コオロギに餌を与えたり、水槽のクラゲを観察したり、顕微鏡でカビの菌を覗いたりといったことを始める。

彼女達は、SSHクラスの生徒達だ。SSHはスーパーサイエンスハイスクールの略である。SSHは文部科学省によって指定される学校で、未来を担う科学技術系の人材を育てるために、科学技術、理科・数学教育を重点的に行う高校だ。2006年からSSHの制度が始まり、2011年度には全国で145校が指定されている。指定された学校の取り組みは様々だ。川越女子高校では、高校生活3年間を通じて、普通クラスに比べ、科学の授業や研究の時間が多いSSHクラスを設けている。例えば、2年生では、普通クラスの生徒が履修する美術や音楽といった授業の代わりに、SSHクラスでは科学に関する実験や講義が行われる。また、SSHクラスの生徒のほとんどは、放課後も研究活動を行う。

「小さい頃、海でクラゲを見て以来、クラゲには興味を持っていたのですが、中学生の時に、『クラゲの不思議』という本を読んで、クラゲの世界へ一気に引き込まれました」とSSHクラスの3年生の山守瑠奈さんは話す。「クラゲは98%が水で出来ているのに、とても活発な動きをして、不思議じゃないですか」

山守さんは、2011年8月に、全国のSSHが集まり研究成果を発表する「SSH生徒課題研究発表会」で、大学の教授や水族館の支援も受けてまとめた「ミズクラゲのストロビレーション及び各段階におけるチロキシンの影響」という研究発表がポスター発表賞を受賞した。

「大学に進学してもクラゲの研究をしたいです」と山守さんは言う。「将来は、研究者か、水族館でクラゲの飼育員になりたいです」

SSHクラスの生徒数は、全校生徒約1100名のうちの25名程であるが、SSHクラス以外の多くの生徒も、大学の研究所の見学、高校に大学の研究者を招いての講義といった行事に積極的に参加している。毎年、地域貢献の一貫として行われている地元の小中学生向けの「科学教室」では、100名以上の生徒が参加し、科学の実験を披露している。また、大学に進学する生徒の約4割が大学で理科学系の学部を選んでいる。

「原子力発電所や環境の問題に代表されるように、現代は、科学と社会が非常に密接に関係しています。科学的な根拠のない情報によって、パニックになったり、間違った行動をとらないためにも、生徒たちには科学的な知識を身に付けてほしいのです」と永松靖典校長は言う。「本校の卒業生は小中学校の教員になる人も多いです。科学的素養を持った次世代を育てる人材の育成も、本校の教育の大きな目的なのです」

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