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Highlighting JAPAN

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特集未来をつくる科学技術

国際ロボット展(仮訳)

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日本ロボット工業会と日刊工業新聞社が主催する世界最大規模のロボット見本市「2011国際ロボット展」が、11月9日〜12日の4日間、東京・有明にある東京ビッグサイトで開催され、国内外から約10万人が来場した。本展は2年に一度開催され、今回19回目を迎える。今年はロボットメーカーや大学など、過去最大となる272社・団体が出展した。
 食品や自動車などの工場で使用される産業用ロボットのほか、介護や医療支援を行うサービスロボットの出展が目立ち、少子高齢化社会のニーズに対応する動きが見られた。出展されたロボットの幾つかを北林あいが紹介する。

●日本精工 盲導犬型ロボット
日本精工は、盲導犬の代わりとして、人を先導しながら階段の上り下りができるロボットを出展した。車輪が付いた4本の脚先には複数のセンサを備え、このセンサで検知した情報をもとに、階段の幅や段数を3次元で認識する。階段だけでなく路上の障害物も検知して、適切に先導してくれる。デモンストレーションでは、階段の前で一旦停止し、下りでも段差の直前で一旦停止する、使用者の安全を考えた細やかな配慮にも来場者の注目が集まった。車輪は、安定感を高めるために1本の脚につき2個ずつ装備され、平地は車輪で移動し、階段は脚を使って昇降する。また、方向転換は、ユーザーが進みたい方向にグリップに力をかけることで容易に行える。このロボットが実用化されれば、介助犬は育成に時間がかかるという問題を解決できる。また、犬が苦手な人からの需要も高まりそうだ。

●富士通研究所 子ぐま型ソーシャルロボット
富士通研究所は、高齢者施設でのメンタルケア、保育園での情操教育などに活用されている子ぐまのぬいぐるみを模した、ソーシャルロボットを開発した。このロボットは、鼻に搭載されたカメラで人の顔を感知し、手を振ったり、人の動作を模倣したりする。体には13カ所にタッチセンサーが組み込まれ、さわるとうれしそうな表情を見せてユーザーを癒してくれる。性格は3種類設定され、会場には異なる性格の3体が展示された。「快活な性格」はレクリエーション支援に、「落ち着いた性格」はペット感覚で家庭用に適している。「人見知り」は、最初目を背けるが、やさしく接するとなつくように設定されている。このなつく過程で高齢者に育児体験を思い出させて自発行動をうながす効果がある。実際、富士通研究所は、認知症高齢者の自宅で、このロボットを使った実験を行った時、被験者の自律神経が活性化する傾向が見られた。
また、ネットに接続すれば高齢者の見守りツールとしても活用でき、ユーザーの動きや表情の活発さをグラフ化して、そのデータを離れた家族がネット上で確認できる。

●日本歯科大学附属病院・モリタ製作所・ココロ SIMROID
一見すると本物の人間のように見えるSIMROIDは、日本歯科大学附属病院とモリタ製作所が共同開発した歯科臨床実習用の人型患者ロボットだ。ロボットの口の中にはセンサが内蔵され、歯を削るときに誤った箇所に触れると「あっ」と声を上げて痛みを訴え、不安な表情や嘔吐反応を見せることもある。また、「大丈夫ですか」と話しかけると返事をするなど音声も認識する。ロボットが受けた負担や医師の診療態度は、モニター上でフィードバックできる。治療技術だけでなく、患者の心理面にまで配慮した診療ができるコミュニケーション力の高い歯科医師の育成を目的に開発された。人間に近いリアルな皮膚の製作はロボット製造メーカーのココロが担当し、口を大きく開けることを考えて強度の高いシリコンを使用している。

●旭光電機 Telexistence FST
Telexistence FSTは、離れた場所にいながら、自分が作業しているような感覚で仕事をまかせられるロボットだ。操縦者は、ロボットが捉える光景を3次元で見られるヘッドマウントディスプレイをかぶり、自分の指先の細かい動きまでロボットに伝達できるグローブを装着する。操縦者の動作は、全身の動きを計測するセンサーチューブによってロボットに伝えられ、腕や指を思い通りに動かすことができるしくみだ。また、ロボットがものをつかむとその感覚は操縦者にフィードバックされる。実際にロボットの遠隔操作を体験した来場者は「ロボットと一心同体となる感覚に感動した」と話していた。

●産業技術総合研究所 パロ
あざらし型のロボットパロは、ロボットを認知症の改善やストレス緩和に役立てようとするロボット・セラピーを目的に開発された。ボディは抗菌加工を施した人工毛皮で覆われ、人工知能によって自律的に行動する。名前をつけて呼ぶと反応し、なでると声を出して喜び、コミュニケーションによって人に楽しみや安らぎを与えるのが特徴だ。形状や動きは、タテゴトアザラシの赤ちゃんがモデルで、開発者が北極に赴きその生態を調査しているので、非常にリアルだ。アレルギーや感染症を理由に動物が飼えない高齢者施設などで、アニマル・セラピーの代用策として海外からも評価が高まっている。既に、日本、デンマーク、イタリア、ドイツなどの国の高齢者施設で利用されている。

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