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Highlighting JAPAN

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特集世界に広がる日本のサービス

価値共創によるイノベーション(仮訳)

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今、世界では、経済のサービス化、サービス産業の国際化が進んでいる。日本、世界のサービス産業で、どのような変化が起きているかをジャパンジャーナルの澤地治が藤川佳則一橋大学大学院准教授に聞く。

──世界のサービス産業の現状をお教え下さい。

藤川佳則氏:経済の成熟化に伴い、経済のサービス化が進んでいます。例えば、日本やアメリカ等の成熟国では、労働人口に占めるサービス業の割合は70%-80%以上に達しています。さらに、成長国においても、経済発展と共にサービス産業が急速に拡大しています。

こうしたことから、ここ数年、サービスを体系的に研究し、サービスのイノベーションやグローバリゼーションを分析する「サービス・マネジメント」に関する議論が世界中で活発化しています。また、サービスを経済成長に活かすための産業政策に関する議論も、国家レベルで行われるようになっています。例えば、アメリカでは2004年に、サービス産業に対する研究開発の重要性を謳う「イノベート・アメリカ」が公表されています。また、日本では2006年に、産業構造審議会がサービス産業を製造業に並ぶ双発の成長エンジンとした「新経済成長戦略」を発表しています。

──海外展開する日本のサービス企業の特徴は何でしょうか。

海外で成功している日本のサービス企業に共通するのは、新しい知識の獲得を目指したグローバル化を進めている点です。例えば、日本を含む世界47の国と地域で440万人以上の子どもに公文式の教育を行っている公文教育研究会は、世界中の公文式の教室の中から、例えば、インドネシアのジャカルタの、ある教室の指導者が行っているフィードバック方法、あるいは、メキシコのメキシコシティの、ある教室の指導者の親とのコミュニケーション方法といったベスト・プラクティスを集め、それらを世界中に24,000以上ある教室に共有するという方法を採っています。つまり、グローバル化することが、世界中の様々な顧客との価値共創の機会を作り、それがイノベーションを生んでいるのです。

──経済のサービス化は、製造業にどのような影響を与えているでしょうか。

今まで、製造業の企業の関心事は、物財としての製品の品質や機能の高度化にありました。しかし、製品の高性能化や多機能化が進めば進むほど、各社の製品にますます違いがなくなります。これが、コモディティ化と呼ばれる現象です。近年、製造業の企業は、脱コモディティ化のために、顧客が製品を買った後に、顧客価値を高めるためのサービス事業に注力し始めています。つまり、サービス・マネジメントは、製造業にとってこそ重要になりつつあります。

例えば、コマツは、世界中で販売した累計20万台以上の建設機械の1台1台にGPSを取り付けており、それらから建設機械の稼働情報を集めるKOMTRAXというシステムを開発しています。コマツは、建設機械の稼働状況を顧客に提供し、顧客は建設現場ごとに、工事の進捗状況、機械の保守点検、車両位置の確認といった管理が可能になりました。

──国際社会の中で、日本はサービスのイノベーションに、どのような役割を果たしているでしょうか。

海外企業が、グローバル戦略上の重要拠点として日本市場を位置づけるという事例が増えつつあります。例えば、アメリカのコカ・コーラは、お茶、コーヒー、スポーツ飲料などの非炭酸飲料の研究開発を、日本で行っています。また、スイスのネスレは、栄養商品、飲料、包装技術の研究開発拠点を日本に置いています。これらの商品に対して非常に高い品質を求める日本の顧客の満足させることが、世界に通用するイノベーションを生み出すと考えられているからです。

また、メキシコのテーマパークであるキッザニアは、日本、インドネシア、ポルトガル、ドバイ等に進出していますが、その世界展開の弾みを付けたのは、初めて海外展開した日本と言われています。キッザニアの誘致を考えていた各国の関係者が、日本のキッザニアを視察し、施設内で、大人を子どもの側に付き添わせることなく、子どものみで職業体験を可能にしている、その確立されたオペレーション業務に感心し、誘致を決めたということです。

これらはいずれも、要求度の高い顧客を相手にし、高水準のサービス業務の実現が求められる日本市場での事業展開が、各国企業のイノベーションやグローバリゼーションをさらに促進する、言わば「ステッピング・ストーン」の役割を果たしている例といえます。

──今後、日本のどのようなサービス産業が海外展開する可能性がありますでしょうか。

日本のサービスが海外展開する条件としては、日本で生まれたサービスが、海外市場が将来到達すると予想されるニーズに先駆けた先進性をもっていること、そのサービスがある程度普遍化出来ること、そして現地市場における再現化が出来ることが挙げられます。例えば、引っ越し業者が考えられます。日本の引っ越し業者は、非常に高い技術で、安全に家具を運びます。これから、海外でも、そうしたニーズが高まる可能性があります。

また、民間の天気予報業者も挙げられます。近年、日本では、企業、個人向けの、非常に極めの細かい天気予報が行われるようになっています。海外でも、飲食業、小売業、運輸業など、天気に影響される企業にとって、天気予報が重要なのは変わりませんので、今後、日本の天気予報業者によるサービスが広がるかもしれません。

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