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Highlighting JAPAN

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連載|世界で活躍する日本人

ブロードウェイでかなえる夢(仮訳)

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吉井久美子氏は、ニューヨークを拠点とするゴージャス・エンターテイメントの社長、共同設立者である。ゴージャス・エンターテイメントは、演劇、映画、日米の人物交流、スペシャルイベント制作など、エンターテイメント・ビジネスのプロダクションだ。ジャパンジャーナルの澤地治が影響力のある日本人プロデューサーである吉井氏に話を聞いた。

吉井久美子氏は、小学生の頃からミュージカルの映画や舞台が大好きであった。「オズの魔法使い」、「サウンド・オブ・ミュージック」、「マイ・フェア・レディー」といった映画や舞台に感激し、高校生の時は、宝塚歌劇団に夢中になった。

「当時は、舞台にあこがれの気持ちは持っていましたが、仕事にしようとは考えてもいませんでした」と吉井氏は言う。「舞台の上での世界に目を奪われて、その裏に、演出家やプロデューサーなど数多くの人が関わっていることに気づいていなかったのです」

1987年、吉井氏はニューヨークの大学に留学、卒業後、ニューヨークの法律事務所に就職、その後、インベストメントバンクに転職しM&Aを専門とする金融アナリストになった。そこで吉井氏は、ビジネスとしてのブロードウェイの世界を知る。その会社のオーナーの妹が、ブロードウェイでしばしば上演される演劇の脚本家であったこともあり、会社内でブロードウェイ関係の仕事の話が頻繁に行われていたのだ。

「ショー・ビジネスであるブロードウェイの世界には『ビジネス』の要素もあるということに気づいたのです。ビジネスであれば、私の居場所もあるに違いないと思い、この世界に入ろうと決めたのです」と吉井氏は言う。「その時、今後自分がどの道に進んで行きたいかという明確な夢を持つことが出来たのです」

以来、吉井氏はブロードウェイとのコネクションを作るために、会う人には全員、「自分はブロードウェイで仕事をしたい」ということを伝えるようにし、友人の紹介、またその人の紹介というように、関係者に次々と面会し人脈を広げていった。やがて、ブロードウェイでミュージカルを制作する小さな会社でパートタイムとして働き始めたが、それでは生計を立てられず、M&A専門誌や経営コンサルティングの仕事を掛け持ち、さらに、夜間、パフォーミング・アーツ・マネージメントの勉強をするために大学院にも通った。

そして、吉井氏は1997年に「ゴージャス・エンターテイメント」を設立、以来、演劇や映画のプロデュース、ミュージカルへの投資に関するコンサルテーション、絵画展覧会、フードフェスティバルのコーディネーションなど、様々な分野での仕事に取り組んでいる。

吉井氏の実績の一つが、日本人演出家の作品をアメリカに紹介してきたことだ。その中の代表的な作品の一つが、2004年から2005年にかけて宮本亜門氏の演出によって再演された「太平洋序曲」だ。「太平洋序曲」は1976年にブロードウェイで初演された作品で、1853年の日本を舞台に、開国に揺れる日本人の姿を描いている。ブロードウェイの歴史上、日本人が演出した初めての作品となった宮本氏の「太平洋序曲」は高い評価を得て、2005年には、アメリカ演劇界のアカデミー賞と呼ばれるトニー賞で惜しくも受賞は逃がしたものの、4部門にノミネートされた。

「プロデューサーとして、アーティストの夢を実現させる手助けをしたいと常に思っていました」と吉井氏は言う。「まさしく、宮本のブロードウェイ進出は、彼の夢であり、私の夢でもあったのです」

吉井氏は、その他にも日本とアメリカとを結ぶ数多くのプロジェクトに関わっている。その一つが、事務局長を務める「Japan Day@セントラルパーク」だ。「Japan Day」は、日米市民の交流促進、ニューヨーク市への感謝の表意、日系コミュニティーの連帯強化のため、在ニューヨーク日本国総領事館や日本やアメリカの企業の支援を受け、2007年以来、毎年、セントラルパークで開催されている。「Japan Day」は、和太鼓の演奏、空手の演武、バンドのライブパフォーマンスなどを紹介するステージや、折り紙や書道の体験コーナー、日本食コーナー、セントラルパーク内での4マイルのマラソン「Japan Run」など、盛りだくさんのイベントだ。

「例えば、日本の伝統楽器である三味線とジャズのコラボレーションなど、ニューヨークならではの、日米文化との融合の紹介もしています」と吉井氏は言う。

昨年は約45,000人が集まった。「Japan Day」がきっかけで、日本に興味を持つようになった人も少なくない。7回目となる今年は、5月12日に開催される。

吉井氏は、これまで、多くのブロードウェイの作品を日本に紹介してきたが、昨年は、映画「シュレック」をベースにしたブロードウェイ・ミュージカル「シュレック」の中国上演も手掛ける。現在は、ブロードウェイでの上演を目指したミュージカルの準備も進めている。また、今年の夏には、東京と大阪にて、ミュージカル「ドリームガールズ」の招聘公演を行う。

「これからも、日本とアメリカとのコラボレーションを手助けしていきたいです」と吉井氏は言う。

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