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Highlighting JAPAN

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海外で活躍する日本人

林基就

一流ソムリエ(仮訳)

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ある夜、銀座にある高級寿司店に行くと想像してみよう。値段は非常に高いが、料理の質も非常に高い。店に入ると、寿司職人が寄ってきて「何にしましょうか?」と尋ねる。その時、彼が青い目をした外国人だと気付く。しかし・・・そこで働いているのだから腕は確かに違いない。あなたならこの場合、店主を呼んで日本人の寿司職人への交代を求めるだろうか?

同じ場面をイタリアの場合で想像してみよう。トスカーナやミラノにある非常に有名なレストランに行くと、注文した料理に合う最高のワインをソムリエが教えてくれる。そして、二・三言も交わすまでもなく、そのソムリエがイタリア人でもフランス人でもなく、日本人だということに気付く!

林基就には、この状況が場合によっては極めて複雑な事態になり得ることがよく分かっている。2010年にレ・グイデ・デ・エスプレッソ誌、2012年にはイタリアソムリエ協会 (AIS) の最優秀ソムリエ賞をそれぞれ受賞した後でも、さらにイタリアでも最も有名なレストランで働いていてさえも、「イタリア人ソムリエ」への交代を求める客がいるのだ。

林基就は、「生まれ育った国の外で暮らすことには困難が伴います。それは言葉の問題に限りません。すべてが異なるのです。しかし、外に出ないことにはそもそも比較することさえできません。生まれ育った国の何が優れていて、何を変えなければならないのかも分からないのです。私の次の世代の人たちにはそれが必要であり、ぜひ実践してもらいたいと感じます。私は日本に愛着を持っていますが、日本の若い世代の人たちが外に出て行かないならば、自分たちが何者であるかの理解もできないでしょう。イタリアは日本のように生活が便利な国ではありませんが、どこを訪れても美しさがあふれる国です。世界のどの国よりも多くの世界遺産があります。しかしながら、重要なことはそれはどのような文化によって生み出されたのか、どのような人々が作り出したのかといったことです。日本人はそういったことに関する理解をもっと深めるべきだと思います」と冷静に分析する。

「世界に出て行くと、周りの人々とどのような関係を持つべきかを知らなければなりません。特にサービス業においては、お客様が何を感じ、何を考えるかを知ることが重要になります。お客様との関係は、お出しする料理そのものと同じくらい大事なことなのです」と語る。イタリアに住んで13年になる林基就はこのことを深く理解している。

林基就は1975年に名古屋市で生まれ、高校時代まではイタリア料理やフランス料理に対しては高価なイメージしか持っておらず、それ以上の興味はなかったが、1カ月間バンクーバーでホームステイを経験したことにより、世界中を旅して回りたいと思うようになり、その後名古屋のイタリアンレストランにパートタイムで働いたことによって、次の目的となるイタリアに渡航する費用が準備できた。

林氏にとって、当初は美食を追い求めることは単に海外での生活経験を積む手段だった。しかし、最初の日本人ソムリエとしてイタリアで名を馳せていた小谷悦郎氏に出会ったことより、彼は方向を変えてワインの道に進むこととなった。彼によれば、「最初は料理よりもワインのメニューの方が品数の多いレストランがある理由が分かりませんでしたが、その理由を理解したとき大変素晴らしいことだと思えたのです。そして小谷氏と出会い、彼のように腕利きのソムリエになりたいと思っている自分に気がついたのです」とのことであり、そしてそれを実現したのである。

林基就氏の輝かしい経歴には今や、ミラノ、ローマ、トスカーナなどの有名レストランがあり、さらに日本市場向けに高級ワインの輸入を行う会社も持っている。「イタリアで長い間暮らしながら、外国人でもソムリエができることを自身で証明しています」と話す。そしてお店に来た客たちは、その証明を堪能することができる。



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