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Highlighting JAPAN

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リーニングイン ーザ・パワー・オブ・ウィメノミクスー

古い布に新たな命を吹き込む

「さんさ裂き織り」(仮訳)



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岩手県盛岡市の郊外の、閑静な住宅地の片隅にあるごく普通の二階建て住宅からは、紡錘機のブーンという音や、ガチャンガチャンという音、そして綿を裂く音が聞こえてくる。かつてはその家の居間だった場所で、幸呼来 (さっこら) Japanのさんさ裂き織り工房は古い布に生き生きとした新たな命を吹き込んでいる。

「裂き織り」は織布の伝統工芸で、古布を細かい断片に裂き、それを厚くて丈夫な布地に織り直したものだ。幸呼来Japan代表取締役の石頭悦氏によると、裂き織りは昔、京都からはるばる運ばれて来る木綿が貴重なものだった北日本で盛んに用いられていた技法だと言う。「裂き織りは日本特有の文化である自然との共生という物への尊重という精神を体現しています」と石頭氏は語り、限られた資源を十分に使うよう努める「もったいない」精神の賜物だと説明する。

盛岡さんさ踊りは夏に行われる壮大な祭りで、何千人もの踊り手や太鼓のたたき手たちが盛岡市の中央通を埋め尽くす。この祭りにちなんで名づけられたさんさ裂き織り工房は、彼らが着た色とりどりの浴衣(伝統的な木綿の和服)を再利用している。幸呼来Japanの名前もまた、「サッコラ、チョイワ、ヤッセ」というさんさ踊り特有のかけ声から来ている。「チョイワ、ヤッセ」は高揚したかけ声で、「サッコラ」は盛岡の方言で「幸せは呼べば来る」といったような意味がある。

幸呼来Japanは2009年に石頭氏が地元の特別支援高等学校を訪問したことがきっかけで設立された。石頭氏はその学校の生徒たちが織った裂き織りに深く感銘を受け、彼らの技術を生かす場所を提供するとともに、経験を積んで将来の職を見つける足がかりとなればと、自らの工房を立ち上げたのだ。現在では精神的、身体的、あるいは心理的な障がいを持つ10人の従業員が鮮やかな布を織っている。

織り上げた布は手作りでコースターや筆入れ、ランプフレーム、ブックカバーなどに仕上げられる。伝統的で地元に伝わる裂き織りの技術と、さんさ踊りの鮮やかなピンクや明るいイエロー、グリーンがを融合させるというアイデアには、石頭氏の女性ならではの感性が活かされている。デザイン性も高く、美しいさんさ裂き織りは、東京、銀座の高級店からも引き合いがあるほどだという。

石頭氏は女性の視点で、革新的・創造的な企業の創業や経営を行い、事業を成功させている女性起業家として、2012年、全国商工会議所女性会連合会が実施した第11回『女性起業家大賞』でスタートアップ部門、奨励賞を受賞した。

自身がデザインしたるり色のハンチング帽を指しながら、石頭氏は新しいものを作り出すことで伝統を継承していくことの必要性を話す。そして幸呼来の商品への注目が高まることで、この岩手の工芸技術が国境を越えて評価されることにつながればと願っている。



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