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Highlighting JAPAN

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連載 47の物語

京都

寺院の影から聞こえるかすかな衣ずれの音(仮訳)



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京都の街は決して大きな声を出さない。そっと囁く。気品と洗練の街だ。東京のシンボルがネオンと高層ビルなら、京都のそれはかすかな衣ずれの音とシャリシャリという砂利を整える音。京都は昔、千年以上にわたって日本の都だった。二千を超える社寺仏閣に加え、商業の要として、そして多くの伝統芸術や工芸品の腕の立つ職人たちの中心地としての長い歴史を持つ。
  
京都の北西の端にひっそりと佇む龍安寺は、日本で最も名高い禅の石庭を持つ。この静かな寺の境内に、「七草湯豆腐」で知られる精進料理の西源院がある。仏教徒の菜食である精進料理は、その質素さと季節感が知られ、また長寿と心の清明を促すと言われる。

お店の女将さんである長谷川ユウコ氏は55年前、寺を訪れる多くの観光客を見て、彼らがくつろぎ、余韻に浸れる場所があったら良いのではと思い、寺の住職と相談して西源院にレストランを創立した。今日、西源院には遠方から多くの人々が訪れ、その精進料理を味わい、畳の部屋で料理を食べながら眺めることができるすばらしい庭を楽しんでいる。

街の中心部に戻ると西陣織会館がある。ここは、19世紀に作られた織物づくりの組合があった場所である。来館者はここで手織りの実演やきものファッションショーを見たり、絢爛豪華な衣装や生地などを眺めたりすることができる。布が好きな人たちにとっては天国だ。

ここでは、ベテランの着付け師に婚礼用の着物から、舞妓姿の着物、加えてかつての皇室装束まで、好きな着物を着せてもらうことができる。着物を着るのが初めての人は躊躇するかもしれないが、ベテランの着付け師の慣れた手によって結ばれたり、回されたりしているうちに完璧に仕上げられてしまう。きもの研究家チーフの石田和子氏は、それぞれの人に似合う着物を選ぶのが特に楽しいと言う。「難しいことではないけれど、人それぞれお顔が違うでしょ。どんな風に仕上がるかを見るのはとても楽しい」と話す。

そしてもちろん、京都でお土産を買わずに帰るわけにはいかない。鶴屋吉信で広く知られるようになった京菓子の世界をどうぞ。1803年創業のこの老舗は、季節に応じた見事な和菓子を数多く作り、その一つ一つが芸術作品だ。「和菓子作りの神髄を会得するのには10年以上かかる」と30年和菓子を作り続けてきた匠である水江政彦氏は言う。

この店のお菓子は主に、あずきや白いんげんから作る「餡」を使っている。普照志計男室長は、店の人気商品の一つであり、彼自身の好物でもあるという「柚餅(ゆうもち)」を奨める。柚の香りのするこの餅菓子は繊細な風味と口当たりの良い弾力があって、いつの時代も色褪せないおいしさだ。

ただお菓子を買うだけでは物足りないならば、生菓子を作っているところを見ることもできる2階の茶室をお奨めする。お菓子作りの実演を見た後には、その甘みを楽しみながら、一杯の抹茶をいただくことができる。泡立った抹茶のなめらかな苦みは和菓子の自然な甘さを引き立てる。

京都の社寺は訪れる者を魅了するに十分だが、少し立ち止まってその囁きを聴こうとする者に、京都は精進料理や着物体験、京菓子など隠された魅力をそっと垣間見せてくれる。



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