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Highlighting JAPAN

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海外で活躍する日本人

クール モビリティ

次世代車いすを作る杉江理氏(仮訳)

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すべての人の移動を楽しくスマートにする――杉江理氏はこのミッションに対し、新しいタイプのパーソナルモビリティに真っ向から取り組んでいる。わずか一年ほどの準備期間で、そのパーソナルモビリティのプロトタイプは2011年の第42回東京モーターショーに出展し、人々の度肝を抜いた。杉江氏は完成したそのモデルに改良を加え2014年には市場で販売する予定だ。

1982年、静岡県浜松市で生まれた杉江氏は大学時代にものづくりに興味を持った。「日産の設計者に会う機会があり、自分は新しいものを創造したい、つくりたいんだと気がついた」と言う。

彼はエンジニアとして日産に入社した。杉江氏にとって設計は職業ではなく、情熱だ。「仕事としてやりたかったわけではない」と彼は話す。「好きだからです。自分がつくったものが、世界の注目をあっという間に集めることの素晴らしさを目のあたりにし、自分もそういうものをつくりたいと思った。車そのものが好きだったわけではなく、全世界に影響を与える商品をつくるという国際的な側面に魅力を感じました」。

杉江氏のグローバルな情熱は数年後、彼に日産を退職させ、まず中国語を身につけるために中国で日本語教師をする道を辿らせた。この世界に6分の1いる中国の人々と交流できるようになることは、今後の人生にきっと役に立つと考えたからだ。その後、旺盛な冒険心で彼はボリビア、ラオス、パプア・ニューギニア、ウズベキスタン他、多くの国々を訪ねた。

2010年、日本人のある車いすのユーザーが、外出先で人に見られるのが恥ずかしいと彼に話した。「100m 先のコンビニに行くのを諦める」と話したという。この言葉に動かされた杉江氏は、ものづくりが好きな友達を集め話し合い、「この人が出かける時にかっこいいと感じられる自分たちも乗りたくなるようなものをつくろう」と決めたと杉江氏は説明する。

グループは一年ほどの間、趣味を追求する同好会のように週末毎に集まった。その結果生まれたのがWHILLだ。巨大な最新型ヘッドホンのようにも見えるそれは、簡単に言えば従来型の車いすに取り付け、モーターによる自動走行を可能にするクールな未来型のデザインの電動モーターだ。

『Smart Aggressive Flight』をコンセプトにつくられたこのプロトタイプは、東京モーターショーで速度が速く法規制が守られない、幅が広い等の賛否両論があったものの、注目を集めた。「ここまで反響が大きくなるとは思わなかった」と杉江氏は話す。「この車いすを見た人たちが、『どこで手に入れたんだ?私も一台欲しい』と」。プロトタイプで終わるのではなく、しっかりと量産して欲しいという人に販売しようと杉江氏はこのプロジェクトだけに集中することを決断する。2012年にWHILL, Incを立ち上げ、東京とカリフォルニアにオフィスを構えて、次世代パーソナルモビリティの製造に向かった。

従来の車いすに取り付ける電動装置のレベルを越え、会社の最新作WHILL type-Aは、従来の車いすを最新のスマートなデザインに変えたパーソナルモビリティである。従来型の車いすと比較し、オフロードでの走行、よりコンパクトなフレーム、動かしやすさと疲れにくいシートを持つだけでなく、同じ価格帯のどの製品よりもクールなデザインだ。9,500ドルという価格で、2013年6月、WHILL type-Aは主要な製品発表の場として知られ、シリコンバレーのネットワーキンググループSVForumやベンチャーキャピタルファンドのGarage Technology Ventures、マイクロソフトなどが主催している「ローンチ シリコンバレー」のライフサイエンス部門で最高賞を獲得した。

その賞に十分値するものではあるが、夢を追う精神がその賞を獲得したのだ。杉江氏は、まだまだ課題だらけだと言う。「製造は始まったばかり。顧客に満足のいくようなものが届けられようにがんばります」。杉江氏にとって一つの目的を達成することは、次の目標への土台となるのだ。



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