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Highlighting JAPAN

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科学と技術

日本が誇る一大宇宙研究

SuMIReプロジェクト(仮訳)



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東京大学が進めているSuMIRe(すみれ)プロジェクト(以下、スミレプロジェクト)は、宇宙の構成要素の大部分を占める「ダークマター(暗黒物質)」や「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」について東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構機構長村山斉教授を筆頭とし、日本を中心に国際的に研究を進め、宇宙の起源と未来を解き明かそうとするプロジェクトの名称である。SuMIReとは、「Subaru Measurement of Images and Redshifts」の略称である。

では、この「ダークマター」、「ダークエネルギー」とはそもそも何なのだろうか。

「天の川」という名称は身近な言葉かもしれない。この天の川には、何百、何千という銀河が集まっている。そしてそれらの銀河団は、それぞれのスピードで移動をしている。銀河それぞれが持つ重力の引き合いでこの移動が行われていると思われていたが、目に見える物質の質量による重力だけでは発生できないスピードで運動している銀河があることが長年の研究でわかった。そして、それを可能にしている不思議な物質が宇宙には満ちていることが提唱され、それを「ダークマター」と呼ぶようになったのだ。

「ダークエネルギー」は、宇宙の広がりに関係していると考えられている。物理学者の間では長年、宇宙はビッグ・バンの影響による膨張を続けており、それはやがて時空と宇宙全体の物質の相互作用によって永続的な膨張が限りなく停止に近い状態になるか、最終的に宇宙の崩壊につながる収縮が始まるとされてきた。ところが、近年の研究から、宇宙の膨張はどうやら減速どころか「加速している」と言われるようになった。その宇宙の膨張の加速に関わっているのが、「ダークエネルギー」と呼ばれるようになった不可解なチカラである。

村山教授はダークマターやダークエネルギーの謎を解明するため大規模な観測プロジェクトであるスミレプロジェクトを提案した。当初、東大から始まったこの計画は、村山教授のこのプロジェクトが世界的に認められるようになったのをきっかけに、それに賛同する研究グループが世界中から参加を申し出て、現在の国際的なグループへと発展し、日本が誇る一大宇宙プロジェクトとなった。

観測の拠点は、日本の国立天文台によってハワイのマウナケア山頂に設置されたすばる望遠鏡。これに本プロジェクトのために膨大な資金で開発された「超広視野カメラHSC」と「超広視野分光器PFS」が取り付けられ、2014年から調査が本格稼働する。これらの装置により、ハッブル宇宙望遠鏡よりも高精度かつ広範囲な映像を地上から撮影することができ、その画質は9億画素にも及ぶという。また、これまで何十年もかかると言われていた研究が、10年ほどで成果を期待できるようになる。宇宙の「地図」を立体的に観測することが可能になり、これを「宇宙の国勢調査」と呼んでいる。

東京大学の研究者たちは、この研究が「ダークマター」、「ダークエネルギー」を解明する留まらず、日本の技術者、研究者を中心としたチームが成果を出すことで次世代に希望を与える二次効果にも期待している。さらに、このプロジェクトによる技術の向上は日本に経済効果をもたらし、また社会の発展にも寄与するものと確信している。スミレプロジェクトの成果に、大いに期待したい10年になりそうだ。



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