Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan June 2014>地方の活性化

Highlighting JAPAN

前へ次へ

地方の活性化

自転車のまち (仮訳)

宇都宮市 



English

東京駅から東北新幹線で約50分、栃木県宇都宮市は交通の便の良さからも観光拠点としての適性も備える街だ。関東平野の北部に位置し、市街地を中心に平坦地が広がる。充実した道路環境の整備がなされ、市の中心部を囲む巨大な環状線を筆頭とする3つの環状道路、郊外に向かう12本の放射道路という道路ネットワークを持つ。こういった都市構造に加え、比較的雨量が少ない、冬季の日照時間が長いといった気候的な要因もあり、宇都宮市では自転車利用に適した街としての環境づくりが推進されている。

自転車のまちとしての存在を世に知らしめたのは、アジア最高位のサイクルロードレース「ジャパンカップ」の開催だ。昨年で第22回を数え、ツール・ド・フランスなど欧州のレースで活躍する一流のプロ選手と日本のトッププロが競う、UCI(国際自転車競技連合)公認の国際レースである。この本戦会場となるのは宇都宮市森林公園。そして駅前から長く一直線に伸びる片道3車線の宇都宮駅前大通りも、クリテリウム(周回型レース)特設コースへと変身する。

例年10万人規模の熱心なファンと多くのメディアが宇都宮を訪れ、日本を代表する自転車の国際イベントとしてすっかり定着した。市が投入するイベント予算の十数倍の収益が宇都宮全体に落ち、経済効果も抜群である。期間中、国内はもちろんタイや台湾など海外のファンも続々と宇都宮を目指してやって来る。国が提唱するスポーツツーリズムの先駆けであり、大きな成功例だ。

もともと、宇都宮の市民生活に自転車は馴染みが深かった。平坦な地理的特性から二輪車移動は当然の選択であったため市民の足として普及し、特に高校生は約8割が自転車通学だという。1990年の世界選手権自転車競技大会の主催やジャパンカップの招致を契機に日本の自転車ファンの間で盛り上がったレース熱は、やがて2008年日本初の地域密着型プロサイクルロードレースチーム「宇都宮ブリッツェン」を生みだした。

こうして宇都宮市は誰もが安全、快適に、楽しく自転車が使えるまちづくりへと結実した。また、自転車専用通行帯など走行環境の整備、駐輪場・休憩スポットの設置、スポーツバイクをレンタルできるサイクルステーションの運営、「宇都宮ブリッツェン」の選手による学校での自転車教育など、市民や企業の協力の下、市を挙げての取り組みの結果、「自転車のまち」として健康で地球に優しいライフスタイルが実現されている。

「ゆくゆくは、この街を起点に自転車を利用して周辺のさまざまな観光スポットを周ってもらえれば」と、宇都宮市観光交流課の島田一氏はさらなる目標を掲げる。環境、観光、スポーツなどの新しい観点から、この地に暮らす人にとっても、ここを訪れる人にとっても魅力あるまちづくりを目指す。自然にも人間にも優しい自転車を媒介に、都市も人も育ってゆくというポジティブな連鎖が、この街では次々と起こっているようだ。



前へ次へ