Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan July 2014>日本の夏

Highlighting JAPAN

前へ 次へ

日本の夏

暑い夏をクールに過ごす知恵(仮訳)

クールビズ

English



日本の夏はひときわ高温多湿。しかし、いかに涼しく過ごそうかと暮らしの中で絞られた知恵や工夫から、多くの伝統文化が生まれた。浴衣やうちわ、風鈴、かき氷などに加えて、近年の日本の夏の風物詩は、ビジネスの場でもエネルギーを節約し、地球温暖化の防止を目指すキャンペーン、「クールビズ」である。

かつて日本の男性はビジネスの場ではスーツ着用でなければならないと夏でも皆一様にスーツにネクタイ姿で炎天下を歩き回っていた。一方オフィス内はきつく冷房をかけていたため、女性スタッフは真夏でもカーディガンや膝掛けを常備していた。しかし現代では、男性でもノージャケット、ノーネクタイに半そでシャツ姿で、エアコン使用時の室温が28度に設定されたオフィスで快適に過ごしている。スーツを脱ぎ捨てた彼らは見た目も涼しく軽やかだ。

この「クールビズ」の動きがこんなにも早く広く浸透した理由は何か。環境省地球環境局 地球温暖化対策課国民生活対策室 係長・藤本なな絵氏は、「地球環境への危機感が高まっていて、クールビズを受け入れる素地があったからでは」と見る。

2005年に「京都議定書」が発効し、国際社会が協調して地球温暖化を阻止しようと合意した後、日本社会でも理解が進み、世論が高まった。国や企業のトップが軽装にシフトする姿を見て、一般的なビジネスの場にも一気にクールビズが浸透した。

日本人が新たなビジネスファッションを工夫するようになり、アパレル業界からも画期的な動きが起こった。たとえば、優れた吸湿・吸汗性や即乾性、さらには通気をコントロールする性質を持つ素材が日本の化学繊維メーカーによって開発され、小売店には「クールビズ」売り場ができた。公共交通機関にも冷房を避けたい人のために「弱冷房車」が登場したが、このように電車の車両ごとに冷房設定温度を切り替えられるような細かな技術と心遣いは日本ならではのものといえるのではないかと藤本氏は言う。

ほかにもイノベーションが普段の生活から始まっている。たとえば、日本では昔から夏に朝顔を育てる習慣もあったが、2011年頃からは、家屋やビル街で育てる動きが「グリーンカーテン」という名称で一般化していった。窓際でゴーヤやキュウリなどの緑の蔓性植物を育て、蔓を伸ばして茂らせることで、日差しを避けるカーテンの代わりになる一方、野菜の収穫もできて一石二鳥。藤本氏によれば、これはもともと一部の地域で都市工学研究者などの試みで行われていたものだという。その後、電力不足を前にして、生活の知恵の一つとして環境省でも「グリーンカーテン」を推進し、地球にも財布にも健康にも良いということで、大きな共感を生んで広まったという。

「皆さんが『気づく』という部分を環境省がお手伝いしただけです」と藤本氏。○○年から○○年までにCO2排出量6%減という目標を達成した環境省が次に取り組むキャンペーンのスローガンは「Fun to Share」だという。個人が実践している楽しい知恵や日本の最新技術など、役立つ知識を皆で共有し、広める。グリーンカーテンはその好例だろう。個人がライフスタイルを変えることが地球環境保護になると気づく、まさにその当事者意識が地球を守ることにつながる。

日本のクールビズの取り組みは、2007年地球環境行動会議での気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長ラジェンドラ・パチャウリ氏のスピーチでも「ひとりひとりの行動やライフスタイルを変えるという発想が重要なエネルギー環境問題において、素晴らしい手本」と評価され、また2008年の国連は「クールUN」と称してエアコンの設定温度を上げた。イノベーションは、企業や研究者によってのみもたらされるのではない。ひとりひとりの意識がやがて確実に地球を救うだろう。



前へ 次へ