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Highlighting JAPAN

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日本の夏

最高の透明度(仮訳)

最高の透明度日プラの創業者が世界の水族館を変える


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ほぼ半世紀前、化学者の敷山哲洋氏は芸術作品を作っていた。それは、合板の薄い切れ端から作られるクールなランプシェードと装飾的な皿である。多くの人々はこの作品の存在を知らないだろうが、彼の作り出した別の作品を何十年も何百万人もの人々が見てきた。実際、人々は彼の作品、つまり巨大なアクリルガラスパネルの内側にいる鮫やクラゲ、ペンギン、その他の海の生き物を眺めるのに忙しくて作品そのものを意識していないかもしれない。

敷山氏は彼が1969年に創業した日プラの社長であり、モントレーベイ水族館、コペンハーゲン動物園、ニューイングランド水族館、沖縄美ら海水族館などをはじめとする世界中の水族館にある水槽向けにアクリルガラスパネルを作っている。

従業員が90人に満たない中小企業であり、本社が香川県南西部にある日プラは、世界が求める製品を作るための、先進の技術とデザインと細部まで気を配る職人技を組み合わせた、多くの意味で日本の伝統の見本のような会社である。敷山氏は81歳であるが、何十歳も若い人にも負けないエネルギーやダイナミズムを持っている。

「私の会社は世界で初めて水族館の水槽に大型アクリルガラスを使用した」と彼は言う。日プラが香川県の屋島山上水族館で曲線状のアクリルガラスパネルを試す前までは、水族館の水槽は大きなサイズと派手な曲線が不可能な剛性ガラスで造られていた。1969年のその初期の偉業以来、会社は力強く成長し、会社の透明パネルはそのサイズにおいて、複数のギネス世界記録に認定された。

日プラの本社の会議室に座る敷山氏は、会社の技術について説明する。彼は25センチメートルの高さのキューブを前に出した。その分厚さにもかかわらず、この物体は前から見ると最高の透明度がある。まるで静止した水を通して見ているようだ。

そして、彼はキューブを横に向け、それがひとつの塊ではないことを示す。ひとつの塊の代わりに6層のアクリルガラスがあり、それぞれ3センチメートルの厚さである。

同社は、品質が一番安定する3~4cm厚の板を重ね、熱処理を行って厚みを増した方が、より安定した製品に仕上がると考えている。この積層と接着のテクニック、そして会社の化学化合技術と細部への配慮が、日プラのパネルをより透明で、より強く、より丈夫にしている、と敷山氏は語る。

彼の顧客の意見も同じだ。ボストンにあるニューイングランド水族館は2000年初頭に、クラゲ向けに超伸張性クライゼルタンク(円形の水槽)が必要だとして、日プラのもとを訪れた。モントレーベイ水族館での成功を聞いたので、とニューイングランドの魚担当の学芸員スティーブン・L・ベイリーは言う。ベイリーは日プラの仕事を「素晴らしい」と評価し、「細かい指示を逐一守り、大型クライゼルタンクの知識を持ち、高価な事業を時間通りに仕上げることにかけて最高の仕事ぶりだった」と賞賛する。

日プラは現在アクリルガラスの新しい可能性を探っている。敷山氏は西脇工業専門学校で化学を学んで以来成功をおさめた後も、アクリルガラスの実験を重ねてきた。 10年ほど前から、パネルを使って、大きくフラットなプロジェクションスクリーンを作っている。水槽と同材のアクリルパネルと加工技術を応用することで、フラットな形状だけでは無く、今までになかった様々な形状のプロジェクションスクリーンを製造することが可能になった。敷山氏はまた、パネルを津波から守る薄いバリアとして使うことも可能だと考えていると言う。さまざまなひらめきが、彼を仕事に向かわせ続けている。

「私は一日も仕事を休まないんです」と彼は言い、笑顔でこう付け加える。「私は年に365日ここにいますよ。」彼のそのエネルギーと、発明という芸術への絶え間ない献身において、敷山氏は日本のトップイノベーターのひとりなのである。

 

 



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