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Highlighting JAPAN

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連載 47の物語

大分

杵築市:戸時代の風情(仮訳)



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九州地方、大分県国東半島の南岸の街、杵築(きつき)は潮の香り漂う街だ。杵築城は眼下に街と守江湾を見下ろす。19世紀の江戸時代の古い町並みを見事に残した石畳の道と昔ながらの瓦屋根を日差しが温め、過ぎ去りし時代と変わらず人々は一世紀以上続いた商店で味噌や陶器を買い求めたり、芝居や踊りを見物したりしている。

街を満喫するには、着物を一日レンタルして、昔ながらの格好で街を歩いてみたい。例えば「和楽庵」では、何百種類もの着物やアクセサリーから気に入ったスタイルを選び、着付け師にきれいに着せてもらうことができる。客のほとんどは日本人だが、世界のさまざまな国から来た人にも人気があると和楽庵の着付け師である青木美津子さんは言う。「お国によってお選びになる着物の模様や色が違いますね。たとえば日本の70歳のご夫人は赤い着物は選びませんが、例えばタイの方ならお選びになります。」

装いも正しく、街の表通りを歩き、お茶や甘味を売る店々を通り過ぎると、前庭で遊ぶ幼稚園児童2人が大きな声で「おはようございます!」と私たちに挨拶する。杵築市の観光局で働く木本紳一郎さんは、「私がこの街に最初に来て一番驚いたのは、幼稚園から高校生まで、子供たちがみな道で挨拶をすることです。そんな場所です」と話す。

ほどなく私たちはかつての武家屋敷が並ぶ一画に入る。畳敷きの茶屋に入った。絵のような庭では、紅葉の枝からウグイスがさえずる。きらびやかな色の鯉が池の睡蓮の葉の下を八の字に泳ぎ、海からの石をそのまま使って作った野趣あふれる石灯籠の傍には節くれ立ち、曲がった松の木が立っている。

お昼にはこの地方の名産でもある古くから伝わるごちそう、「鯛茶漬け」を「若栄屋」で試す。このレストランは杵築城にほど近く、3世紀以上にわたり、将軍や天皇などの客に鯛茶漬けを提供してきた。若栄屋では、薄く切って味付けした新鮮な鯛の切り身をご飯の上に重ね、特産のごま醤油をかける。熱く煮立ったお茶を上から注ぎ、3秒ほどふたをして蒸らしてから食べる。そのシンプルで雑味のない新鮮な味はかつてこの鯛茶漬けを食べた杵築の領主を「うれしの(嬉しい)!」と唸らせたという。

古い芝居小屋である「衆楽観」からは数百メートル離れていても大きな笑い声が聞こえてくる。芝居好きの客は、巡業する一座が演じる人気の芝居や踊りの、時には現代の音楽と組み合わた演目に大いに盛り上がる。白塗りの化粧に派手な着物をまとった役者たちが観衆に流し目を送り、ちょんまげを結った荒武者たちは、見事なチャンバラを演じる。私たちの隣の席の60歳の男性は、白と銀色の着物を着た19歳の女形と呼ばれる女性を演じる男優が舞台でしなを作るのを指して、「いいねぇ」とつぶやく。

芝居が終わると役者たちは入り口の外に並んで、客たちに挨拶する。満足げな客たちは通りに散らばって行くが、その場で立ち話に興じる客、喫茶店に入る客もいる。派手な衣装と厚化粧のままの役者たちは、客を見送りながら「ありがとうございました!」と声を張り上げている。「またおいでください!」

 



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