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日本では、死因においてがん、心疾患、脳血管疾患などが占める割合が近年増加傾向にある。これらは加齢や遺伝的要因だけでないことがわかってきており、不適切な食生活や運動不足、過度の飲酒、喫煙、ストレスといった生活要因が深く関わっていることが明らかになっている。肥満や高血圧、糖尿病といった生活習慣病は、単独では軽症でも、複合的に重なることで脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす危険性が高くなる。日本での生活習慣病の発症前の段階であるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の数は諸外国に比べれば低いものの、近年は増えつつある。今では40歳以上の男性の2人に1人、女性の4人に1人と言われており、健康長寿の阻害要因となっている。
厚生労働省はメタボリックシンドローム及びその予備軍を2008年から2015年までに25%減少するという目標を定め、「特定健診・特定保健指導」を進めてきた。個人が日常生活の中で適度な運動、バランスの取れた食生活、禁煙を実践することによってメタボリックシンドロームを予防できるよう支援を行っている。
具体的には、「特定健康診査・特定保健指導」として、40歳から74歳の人を対象に年一回健診(問診、身長、体重、腹囲、血圧測定、血液検査)を行う。特に腹囲が重要視されており、男性で85cm以上、女性で90cm以上が内臓肥満と判定される。これに血圧、血糖値、喫煙歴などからメタボリックシンドロームになる可能性リスクを評価し、その程度に応じて保健指導が行われる。
同省保険局が過去4年間分のデータを用いて検証した中間報告によると、特定保健指導終了者は当健診を受診していない者と比較すると、男性では約3割、女性では約4割がメタボリックシンドロームのリスクを回避できたという。
同省健康局がん対策・健康増進課の野田博之氏は、「最近では民間企業の力を借りて、健康寿命を延ばす活動に一緒に取り組んでいます」と語る。2011年から開始された「スマートライフプロジェクト」では、民間企業や自治体など2300団体と連携し、参加企業の従業員の健康づくりのための普及啓発や各団体の商品やサービスを通じて健康寿命を延ばすための具体的なアクションを呼びかけている。
例えばこのプロジェクトに参加している計測器大手の株式会社タニタは、通信機能を備えた歩数計、体組成計、血圧計、インターネットを使い、継続的に社員の健康を管理している。導入から半年で社員全体の平均体重を3.6kg減らすことができたなどの成果が認められ、タニタは2013年に厚生労働大臣最優秀賞を受賞した。「こうした新しい取り組みによって、これまで生活習慣病を意識していなかった若年層にもメッセージを届けることができるようになりました」と野田氏。
最近は、旅館やホテルに泊まり、運動・栄養の保健指導を受けるプログラムも一部の自治体や旅行会社を中心に行われている。例えば新潟県の柏崎市では、65歳未満の市民を対象に、ホテルで1泊2日の合宿を行い、管理栄養士や健康運動指導士の指導により食事の改善や基礎代謝量を上げる運動を学ぶプログラムを2012年から行っている。公共施設の利用により、利用者は7000円のみで参加することができ、年々参加希望者が増えている。
生活習慣病を予防し、健康寿命を延ばすことは、高齢者だけの課題ではない。病気になる前から健康への意識を高めることで、より多くの人が健康に長生きすることが可能になるだろう。
© 2009 Cabinet Office, Government of Japan