Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan December 2014>未来を支えるインフラシステム

Highlighting JAPAN

previous Next

未来を支えるインフラシステム

海外マーケットの拡大が

日本の技術力の向上につながる(仮訳)

家田仁教授インタビュー



日本では今、官民が積極的に連携し、日本のインフラ技術やシステムを海外に輸出していく動きが盛んになっている。一言でインフラと言っても、道路や鉄道の建設、上下水道の整備などに代表されるハードインフラ、体制整備や人材育成等のソフトインフラとその範囲は多岐に及ぶ。インフラ輸出は国内外にどのような影響を与えるのか、東京大学・政策研究大学院大学 社会基盤学教授の家田仁氏にお話を伺った。

日本が掲げているインフラ輸出政策とはどのようなものなのでしょうか
日本のインフラ技術は、地震や台風といった自然災害に見舞われやすい環境の中で、困難な状況にも対処できる品質を確立し、過密な人口や環境にも配慮しながら整えてきた背景があります。しかしながら、国内のインフラ需要は15年ほど前から縮小傾向にあります。一方海外に目を向ければ、東南アジア、南米、アフリカ、中東など、今まさにインフラ整備を必要とし、今後より需要が伸びていくであろう国がたくさんあります。従来はODAというかたちでそうした国々に技術協力をしていましたが、それに加えて国家としてもインフラ輸出をビジネスにして行こうというのが、日本のインフラ輸出政策です。

世界におけるインフラ需要の現状と日系企業の進出状況について教えてください
インフラ整備においては経済インフラを優先するのがグローバルスタンダードです。世界にはまだ経済インフラも十分に整備されていない国が多く、生活・医療インフラに関してはこれからという国も含めると、世界のインフラ需要は今後も伸び続けると予想されます。日本企業は積極的にインフラ輸出を展開しており、進出状況は好調といえますが、日立製作所による英国での鉄道の経営も含めた高速鉄道ビジネスといった成功例もあれば、アルジェリアの高速道路工事のように予想外の地盤条件の悪さと契約スタイルの相違により苦戦を強いられている事例もあります。技術さえ良ければうまくいくというわけではなく、現地の慣習や仕組みを十分に熟知してから進出することも重要です。

日本のインフラ技術の強みは何ですか
地球上で自然災害の影響を受けない地域というのは実はヨーロッパの一部を除けばなきに等しい。世界の国々で災害に強いインフラが求められる中、地震や台風などの災害対策を考えながら発展してきた日本のインフラは、過酷な環境に耐えられることが前提として設計されており、その品質や技術力の高さが強みだと言えるでしょう。

インフラ分野において日本は今後どのようなことに力を入れて行くべきですか
優れたインフラの質を最大限にアピールするために、日本はもっと諸外国と上手に付き合うことができるようになるべきです。私は「内なる国際化」と呼んでいますが、具体的には日本国内で外国人留学生を対象にインフラに対する理解を深められるようなイベントを企画したり、セミナーを開催したりすることも重要です。彼らが将来、自国に戻って様々な分野で活躍する人材であろうことを考えれば、そのひとりひとりは日本にとっても貴重な人的資産であると思うからです。

インフラ輸出は日本の産業にどのような影響をもたらすのでしょうか
インフラは日進月歩です。例えば、日本の新幹線は開通から50年になりますが、この間により速く走らせるため、車両の軽量化や省エネ化を図る技術開発を続けてきました。このような技術開発を行うには、マーケットを拡大させて研究費を増やし、その成果を技術の進化に反映させるといったサイクルが必要です。日本国内のインフラ需要が飽和状態にある今、海外でのマーケットを拡大させることは、日本の技術力をさらに向上させることにもつながり、より一層世界に貢献することが可能となるのです。




previous Next