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Highlighting JAPAN

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未来を支えるインフラシステム

安定したエネルギーの供給

アフリカの電力を支える

オルカリア地熱発電所(仮訳)

未だ電力需給が不足しており送電も不安定なアフリカでは、天候に左右されやすい水力発電や、石油資源を輸入しなければならない火力発電に依存している。そんな中、アフリカ東部の大地溝帯に地熱資源があることがわかり、地中の熱を電気に変換する地熱発電への期待が高まっている。

地熱発電は、井戸を掘って地中から蒸気を取り出し、高温・高圧の蒸気を使ってボイラーを回して発電する再生可能エネルギーのひとつ。地中深くのマグマで温められた地下水が貯留されている「蒸気だまり」は極めて膨大で、一度掘り当てれば半永久的な利用が期待できる上に、水力のように天候に左右されることもなく、稼働してしまえば安定的に発電できる。二酸化炭素排出のないクリーンなエネルギーでもある。

アフリカでも特に地熱資源が豊富だとされるケニアの地熱発電ポテンシャルは、10,000MW(メガワット)以上にのぼる。2013年の時点では、全電源の約14%にあたる240MWを地熱発電で賄っているに過ぎないが、ケニア政府は2030年までに地熱だけで6500MWという目標を掲げるほどの期待を寄せている。

ケニアの地熱ポテンシャルの高さに対しては世界中が注目しており、地熱発電開発において世界をリードする日本も名乗りを挙げている。環太平洋火山帯に位置する日本は地熱資源豊富な国のひとつであり、1919年から地熱開発を行ってきた歴史がある。ボイラー、プラントともに日本は世界トップシェアを誇り、地熱発電所建設においては世界トップクラスの経験と技術が認められているのだ。

日本では国際協力機構(JICA)が中心となって、2010年からケニアの地熱発電所建設を支援し、地熱開発のための調査段階からプラント建設まで、技術協力と円借款を行っている。人材面での支援にも積極的で、日本の地熱発電関連企業からエンジニアを35人以上現地派遣している一方、ケニアからも70名以上の研修員が訪日して研修を受けた。プラント設置後には、送電施設や民間参入を促す取り組みへと、段階的に支援の形も変わっていく。

大規模な地熱発電所建設が進められているのは、首都ナイロビから北西に約75kmのオルカリアだ。ヘルズゲート国立公園の近辺にある緑豊かな地域で、地熱発電に適した条件を備えている。現在5つの地熱発電所建設計画が進行中で、JICAが中心となって建設を進めている発電所だけでも現在賄っている電源と同じ210MWの発電量を確保できることになる。

ケニアの電力需要が安定することで、日本企業の誘致を進めやすくなるというメリットもあるとJICA アフリカ部の丸尾信氏は言う。「アフリカの中でも比較的日本への地理的・心理的な距離が近く、国際外洋港も擁するケニアには、新たな製造拠点として関心を示している日本企業もあります。周辺国も含めれば約1億5千万という人口規模も魅力です。ただし、安定した電力がなければ製造コストにも影響を及ぼすので、発電所建設に対しても関心が高いのです」。

地熱発電プロジェクトはケニアにとっての救世主となるばかりではく、日本がインフラ輸出やアフリカへの企業進出を実現する足掛かりとなる。さらに、再生可能エネルギー分野における日本の強みを世界に向けて発信することにも繋がるなど、次世代に向けた重要なプロジェクトだといえるだろう



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