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Highlighting JAPAN

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未来を支えるインフラシステム

ついに繋がった

トルコのマルマライ地下鉄トンネルが

イスタンブール150年来の夢を実現(仮訳)



ヨーロッパとアジアの交差地点に位置するイスタンブールは、ボスポラス海峡の複雑な潮流によって分断されている。しかし2013年10月29日、海峡の下を通る鉄道トンネルがついに両岸をつないだ。かつて鉄道エンジニアたちが、この両岸の隔たりを埋める蒸気機関車の構想を最初に思いついてから1世紀半後のことである。マルマライトンネルができるまで、人々は渋滞する吊り橋を車で2時間かけて渡るか、30分かかるフェリーに乗るかのどちらかだった。それに対し、新しい海底鉄道トンネルを通る列車を使えば対岸までたった4分で行くことができる。

トルコ政府は、交通渋滞を緩和し、排気ガスによる大気汚染を改善するため、80年代後半にこの大掛かりなマルマライプロジェクトに取り掛かった。このプロジェクトはイスタンブールのヨーロッパ側の20キロメートルの線路とアジア側の40キロメートルの線路を改良し、新しい車両と制御システムを導入して、海峡の下にトンネルを建設するものであった。日本政府からの資金援助を得て、東京に本社を置く大成建設株式会社は、トルコ企業とジョイントベンチャーを組織し、2004年8月にこのトンネル建設に取り掛かった。

マルマライトンネルは2つの点で世界初の試みとなった。 世界で最も深い海底沈埋トンネル(コンクリートや鋼板でつくった函体を、海底に沈めて造られるトンネルのこと)であり、また長方形の沈埋トンネルと陸上から延びる従来型の円形トンネルを接続することに世界で初めて成功した。海底トンネル部は、両端の鉄道の駅の深さに対する制限によりトンネル掘削機は使用できなかった。沈埋函を水面から60メートルもある海底に下ろすために、作業船がボスポラス海峡の複雑な潮の流れと戦った。各函体が沈められた後、エンジニアたちは1.4キロメートルの海底トンネルを、誤差10センチメートルの範囲に維持しつつ、地上から延びるトンネルと注意深く接続した。

大成建設 国際支店・土木部部長の今石尚氏は、このプロジェクトに直接携わった。建設にあたり厳しい技術的要求もあったが、今石氏がもっとも記憶していることは、文化規範の違いから生じる困難についてである。

「当社にとってトルコでの事業は初めての経験で、規制やビジネスの感覚は日本とは全く異なるものでした」 と今石氏は述べ、トルコでの宗教的慣習に従いつつ仕事をする地元のやり方がどのようなものであるかを説明してくれた。つまり、「日本のスケジュールで進めることはできませんでした」という。

このプロジェクトがイスタンブールで行われることも、大きな悩みの種だった。イスタンブールの歴史は古く、オスマン、ビザンチン、ローマ、ギリシャ時代の史跡の他に、更に8500年前の遺物も出土した。遺跡が発見されるたびに考古学的調査が行われるため、建設は中断され、最終的にプロジェクトの完成が5年近くも遅れることとなった。とはいえ、「私たちはイスタンブールの歴史について新しい知識を得ることができました」と今石氏は述べ、完全な形で発見されたローマ時代の貨物船について話してくれた。これは、歴史家たちに古代の交易路の貴重な手がかりを提供することになった。これらの遺物のいくつかは、現在イェニカプ駅のオープンミュージアムに展示されている。

今石氏によると、大成建設のような日本の建設会社は、通常外部に技術開発や設計を委託する外国の建設会社と違って、社内に独自の研究所と設計者を有しているため、このようなプロジェクトに非常に適しているとのことである。そのお陰で、マルマライプロジェクトにおいて予期しない要求等に対して、より柔軟な対応ができたと彼は述べる。海底トンネルは100年間維持できるように建設する必要があったため、耐震建設の専門知識も役立った。

新しい地下鉄は稼動にまだ制限があるものの、利用者数は多く、乗客たちは時間も費用も節約できることを高く評価していると今石氏は述べる。このトンネルはすでにイスタンブールのより良い交通手段になったと同時に、日本の技術力を証するものでもある。



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