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Highlighting JAPAN

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未来を支えるインフラシステム

新しいゲートウェイ

ベトナムの主要空港で乗客にとって

最高の環境をつくる(仮訳)


ベトナムは、ASEAN諸国の中でも特に急速な発展を遂げている国の一つだ。低コストの工業労働力を求める世界的な需要の高まりにつれ、近年目を見張るような産業化を遂げるとともに、世界遺産などを持つ観光地としての人気も高まっている。ベトナムへ進出する日系企業も多く、対ベトナムの国別ODA供与額で日本は長年1位に位置している。

そんなベトナムへの玄関口が、ベトナム北部、首都ハノイの中心部から約45kmのところに位置するノイバイ国際空港だ。しかし現在、航空旅客需要が急増し、ノイバイ国際空港第1旅客ターミナルビルは当初想定していた年間取り扱い旅客容量600万人を大きく上回る1200万人強(2013年実績)を受け入れる事態となっている。

第1旅客ターミナルビルの容量超過を受けて、2010年3月、独立行政法人国際協力機構(JICA)とベトナム国政府の間で「ノイバイ国際空港第二旅客ターミナルビル建設事業」にかかわる円借款貸付契約が調印された。フライトインフォメーションシステムやバゲージハンドリングシステム、給油ハイドラントシステムなどの最先端の設備・システムが導入される第2旅客ターミナルビル(以下T2)では、適切な運営や維持管理のための知識やノウハウも必要となる。そこで1997年から20件以上の海外事業の実績を持ち、空港運営を熟知する成田国際空港株式会社(NAA)が、JICAの技術協力の一環として、ノイバイ国際空港T2の運営・維持管理を行うベトナム空港会社(ACV)を支援することとなった。

手始めはT2供用へ向けた、約300項目にものぼるTo Do Listの作成だった。マネジメントコンセプトの設定、航空会社との協定や契約の締結、テナントの選出、施設の維持管理、各種訓練、空港使用料等の料金設定など考えなければならない項目は細部に及ぶ。国も文化も法律も違うのでNAAが用意した準備項目を、ACVのスタッフが主体的に修正してベトナム版に作り替えるのだが、「現地スタッフに対して、なぜその項目が空港運営のために重要なのかを理解してもらうことから始めたため、準備の段階が一番大変でした」とプロジェクトを担当した経営計画部国際事業室の麻生恭弘氏は振り返る。

供用準備が本格化し、NAAが提供した運営支援の中でも日本ならではのものは、CS(顧客満足)向上活動だろう。例えば、バゲージクレームは、時間がかかり、また運用方法によっては旅客にとってストレスのあるものと認識されてしまう。NAAは、顧客にとって快適な設備やサービスを提供するための施設の運用方法や維持管理について紹介した。また、高齢者や障害者も含め、誰にとっても快適な環境を作れるよう、バリアフリー計画やサービスレベルの高いターミナル運用について紹介した。この広範囲なCS活動を念頭においたターミナル運用方法はACVの高評価と共感を得て、ノイバイ国際空港幹部が率いる現地スタッフによるCSワーキンググループも立ち上がるほどだった。ACVは「ここを知りたい」と具体的な項目を挙げて研修開催を求めてくるほど意欲的になり、成田国際空港における諸施設の詳細な維持管理を始めとしたターミナル運用に係る研修も実施した。良好なパートナーシップを築いた両空港は志を一つにして2014年末のノイバイ国際空港T2の供用を待つ。

今回のプロジェクトは若手も含めたNAAのスタッフが大規模な新空港ターミナルビル建設に関する知識を吸収できる機会でもあり、NAAにとっても大きなメリットがあった。麻生氏はその手応えをもとに、「将来的にはグループ企業も巻き込んで、積極的に海外事業を推進し、海外の空港運営にも参画していきたい」と展望を語った。



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