Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan Jaunary 2015>日本のテキスタイル

Highlighting JAPAN

previous Next

日本のテキスタイル

ジャポニスムを生んだ日本のテキスタイル(仮訳)

クールジャパン機構

代表取締役社長 太田伸之氏 インタビュー



日本では着物文化の伝統を背景に、全国各地で繊維産地が発展してきた。日本のテキスタイルの魅力は何か、そしてその理由とは。イッセイミヤケ社長、松屋常務執行役員などを歴任し、国内外のファッション業界に精通するクールジャパン機構代表取締役社長 太田伸之氏にうかがった。

日本のテキスタイルは世界でどのような位置にあるのでしょうか。

日本のテキスタイルは、欧米の一流ファッション業界で高い評価を受けています。欧米の高級メゾンはこぞって日本製テキスタイルを採用しており、これなしでは服が作れないと言います。また、ハイテクノロジーが生み出す高性能・高機能な化学繊維の分野において、日本の技術は世界トップレベルの水準であり、高く評価されています。

このように日本のテキスタイルが信頼を集める背景には、日本の職人気質があります。日本の繊維業界や技術者は、夏は高温多湿で冬は気温が下がるといった日本ならではの気候を快適に過ごすために、伝統的な織物から化学繊維まで多様な素材を生み出し、革新的な技術を次々と世に出しています。時代の先端にいるファッション業界の注文は時に難問で、欧州の職人は「それは我々の伝統とは違う」と断ることも多いのです。しかし日本の職人には独創的な発注にも創意工夫して応えようとする粘り強いものづくりの姿勢があり、実験精神と繊細な感性を備えた高い技術力が信頼され、重宝されているのです。

日本の経済発展において、繊維産業が果たした役割を教えていただけますか。

日本の繊維産業は、明治の殖産興業に始まって昭和30年代まで製造業の中心であり、輸出産業の主力として日本経済を支え、その技術力はのちの重工業発展の礎ともなりました。

幕末から明治初期にかけ、横浜から大量のシルクが輸出された時期があります。富岡製糸場がある群馬県をはじめ長野県などの各産地から生糸が横浜へと運ばれたことから、その街道はのちに「日本のシルクロード」とも呼ばれました。そして日本の繊細な絹織物がフランスに渡り、2度のパリ万博で日本の着物固有の自然モチーフを着物全体に大柄で表現した絢爛豪華なパターンや垂れ下がる袖や床に垂れる裾、華麗な帯から成るゴージャスなフォルムが、驚きをもって迎えられたのです。熱狂的なジャポニスムの機運が生まれ、オートクチュール界はもちろん、欧州の絵画や製陶にも大きな影響を与えました。

日本が誇るテキスタイル職人のものづくりの精神と技術は、そのような独創的な着物文化に培われたもの。いま再び「クールジャパン」として脚光を浴びるのは歴史的な帰結でもあると言えるでしょう。

日本のテキスタイルやファッションは、今後どのように発展していくのでしょうか。

伝統と革新技術を融合し、世界的な評価を受けている日本のテキスタイルには、従来にはない光沢や発色性、肌ざわり、機能といった明らかな付加価値があります。しかしそれで利益を上げる方法論は、まだ不足しています。そのため、日本の技術と感性を発信していく一方で、日本のテキスタイル業界が自らの優位性や価値を世界レベルできちんと認識し、世界に向けて堂々と値付けをしていきたいと考えています。

日本がもつ技術力や美意識を世界のマーケットに伝え、広め、自信を持って売る。日本のファッションやテキスタイル業界には実践的なマーケティング、マーチャンダイジングの知識が必要です。そのための人材育成をするような教育機関の強化も重要です。ジャポニスムを生んだ日本のテキスタイルを再び世界へ伝えて行きたいと思っています。




previous Next