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Highlighting JAPAN

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防災

使命を背負ったハンドクリーム

気仙椿ドリームプロジェクト(仮訳)


岩手県の陸前高田市は日本の東北地方東岸に位置し、豊かな自然に恵まれた漁業の盛んな地域にある。同市は、2011年の東日本大震災と津波によって大きな被害を受けたが、今もなお復旧は道半ばだ。

この地方に自生する植物のひとつが椿である。海外におけるアルガン油やホホバ油と同様、日本では椿油は化粧補助品としてよく知られている。特徴のあるヤブツバキの花からとれる種を常温でプレスして作られるこの油は、油そのものとしても、またシャンプーやローション、スキンケア製品の添加物としても広く使われている。油を生産する際のどろどろの残余物や花びらは石鹸などに利用できるため、廃棄する部分がまったくない。

渡邉さやかさんは、大震災に見舞われた2011年、民間企業でコンサルタントとして働きながら、社会貢献のボランティアとしても活動していた。彼女は、自分のスキルを生かして産業の復興に貢献したいと考えて東北地方を訪れ、そこで同じくボランティアとして働いていた佐藤武さんに出会った。二人はこの地域の復興のために共同であるプロジェクトを立ち上げることを決意した。

佐藤さんは椿について「元々は家を風や火事から守るためのものでした。冬でも、また強風下でも、花びらが落ちることはありません。根は強固で、そのため土壌も強くなります」と語り、渡邉さんはさらに「そのことによって強くて美しいという椿のイメージが生まれました。それは東北の復興を象徴するイメージでもあるのです」と付け加えた。

佐藤さんは、50年以上にわたって椿を栽培し続けていたにもかかわらず、大震災の発生によって廃業することを決めていた椿油生産業者の石川秀一さんに巡り合った。地元に仕事をつくり、障がい者雇用を生み出すことを目的に、近くの障がい者グループホーム「青松館」の協力を得て生産設備を整えて、最初は純粋な椿油のボトリング事業が開始された。

しかし、このプロジェクトチームはその事業をさらに一歩先に進め、椿油を使った化粧品をつくろうと考えた。女性医師の会「En女医会」や支援を申し出たハリウッド化粧品という美容化粧品会社などと協力して、「Heaven & Heart 気仙椿ハンドクリーム」を開発したのだ。椿は古めかしいイメージを持たれることもあるため、スタイリッシュな若い女性に使ってもらえる製品を目指した。佐藤さんは「En女医会には20代から30代の多くのメンバーがいて、デザインと機能両面で自分たちが使いたくなる製品を熱心に発案してくれました」と説明する。彼らは2012年に販売を開始した。

このハンドクリームは椿油を保湿および柔軟剤として含んでいるほか、甘み豊かなマルメロの種のエキス、ビタミンE、そしてシャクヤクのエキスが含有されている。Heaven & Heart 気仙椿ハンドクリームはすべて日本国内で製造され、臨床試験のために動物を使うこともしていない。デザインには女性ならでは感性を生かし、椿の花をモチーフにして可愛らしさを表現した。

最初に生産されたチューブ入りハンドクリーム3000本がわずか1か月で完売したことから、彼らの事業が的を射たものであったことは明らかだ。渡邉さんは「ハンドクリームを1本だけお求めになる方はいません。皆さん、例えば5本お求めになってご友人にプレゼントされたりします」と語る。販売開始後このブランドで13,000本以上のチューブ入りハンドクリームを売り上げ、また2013年には同じラインのリップクリーム製品を開発した。これらの製品は東京エリアの有名ショッピングセンターなどをはじめとして国内各所で販売されている。

彼らは、ロンドン、マレーシア、香港、バンコクなどで開催される数多くの国際催事にも出品している。佐藤さんと渡邉さんは、Heaven & Heart 気仙椿ハンドクリーム、またその原料である椿を、単に美容素材としてだけではなく、東北の復興力の象徴として海外へ推進しているのだ。



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