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Highlighting JAPAN

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なぜここに外国人

古民家の再建

現代向けに日本の古い民家を考案し直す

カール・ベンクス氏(仮訳)


田舎の過疎化とより快適な住居への嗜好が合わさり、伝統的な民家は次第に日本の各地域から失われつつある。建築家で長く日本に在住するカール・ベンクス氏は、これらの古民家の本質を残しつつ、ヨーロッパ的センスで現代風に改装する新しい選択肢を提供している。

このドイツ生まれの建築家は、ベルリンで絵画修復をしている画家の父親と日本建築に造詣の深いドイツ人建築家ブルーノ・タウト氏からの影響で日本に関心を持つようになった。当初主な仕事として、ベンクス氏は茶屋のようなスタイルの古い日本的構造を持つ家屋を分解し、ドイツでそれを再構築していた。彼が現在の住居となる家を新潟県の竹所 (たけどころ) という小さな村で見つけたのはこの仕事を通じてであった。この古い民家は悲惨な状態だったので情熱を燃やしたとベンクス氏は言う。これをきっかけに、後に彼は日本に本拠地を移し、新しい事業の一環としてこの小さな村で計7軒の家を修復または新たに建築しつつこの地を再建した。

現在カール・ベンクス&アソシエイトは新潟県の松代を拠点とし、明治時代に立てられた旧旅館を本社として利用している。スペースが限定されることの多い近代的な事務所とは異なり、この場所は広々として風通しが良く、デザインコンセプトのショールームの役割も果たしている。一階には木の床で構成される部屋にオープンシート付きのカクテルバーがあり、イベントスペースとなっている。また二階にはベンクス氏は蝶番付きのガラスパネルと、解体予定の古い倉庫から持ってきた複雑な鉄製建具の付いた厚い木の引き戸を組み合わせた部屋を用意している。

日本の雪国の長い冬において、このような古い住居は寒くて暗くなりがちなため、多くの現代の日本人はあまり住みたがらないことをベンクス氏は理解している。彼のアプローチは、床暖房や二重窓、内部の暖気を保つための断熱などにより、これらの民家を居心地の良い快適なものにするというものである。さらにスタイルの融合を作り出すために、外部にも内部にもドイツの建築的伝統の要素を加えることもしている。彼が改造した全ての家について、「最も重要な点として、骨組みはそのまま残すということです」とベンクス氏は述べる。

これは極めて理にかなっている。日本の古民家の強く丈夫な木造りの骨組みは、見た目が見事なだけではなく、これらの伝統的な家を台風や地震などの自然災害に耐え得るものにしているからである。「民家はしっかりと造られていて、災害から損傷を受けた場合にも容易に修復することができます」とベンクス氏は説明する。「大工たちはその美しい建築物の建具類にいかなる種類の釘も使用しなかったので、古民家は自然の力に耐えるのに十分な柔軟性を持っています」。

古い住居には住みたがらないという先に述べた傾向にも関わらず、驚くほど多くの都会の若者たちが地方でのよりストレスの少ない生活に関心を持っているとベンクス氏は信じている。「彼らは雪に対する恐怖も、田舎の生活に対するネガティブなイメージも持っていません」と彼は見解を述べる。それにもかかわらず、田舎に住みたい人々にとって難問の一つは仕事を見つけることだとベンクス氏は認め、時には田舎の家を分解して東京の高輪や埼玉県の郊外など、より仕事がたくさんある大都市に近い場所に移転させたその方法について語ってくれた。

ベンクス氏は人生の21年間を日本で過ごし、2015年の時点で50軒の住宅をすでに完成させたが、さらに50軒を建て、その他のプロジェクトも実現したいと彼は述べる。「建築家たちと大工たちの集まりを守りたいのです。彼らにはもっと自分たちのスキルを用いる機会が必要ですから」と彼は説明する。ベンクス氏は、自身の仕事が日本の民家を保存することだけではなく、民家を建て、維持するのに必要なスキルを守ることでもあると信じている。

 



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