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Highlighting JAPAN

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観光

酒蔵ツーリズム

世界一のチャンピオン・鹿島市の
サケにひとが集う(仮訳)



酒蔵とは、日本酒の伝統的な醸造所の呼称だ。佐賀県鹿島市では、この酒蔵を巡り、それぞれの芳醇な味わいを楽しむ観光「酒蔵ツーリズム」を発案し、国内外の旅行客を集めて大成功を収めている。

きっかけは、鹿島の酒蔵の一つである富久千代酒造の日本酒「鍋島」が、2011年に世界最大級のワイン品評会IWCで最高栄誉「チャンピオン・サケ」に輝いたこと。権威ある受賞によって「世界一のチャンピオン・サケを生んだまち」として注目を浴びた鹿島市は、地元の6軒の蔵元を中心にそれまでばらばらだった蔵開きを同時に行う「鹿島酒蔵ツーリズム」というイベントを2012年3月に企画・開催。なんと市の人口に匹敵する3万人の観光客が殺到した。

「今年で4回目となりますが、来場者が5万人に達した年もありました。普段はのどかなこのまちも、イベントの2日間は人が溢れ、無料循環バスや特別列車が運行されます」と、鹿島市役所商工観光課の江島賢一氏は嬉しい表情を隠さない。

アルコールをメインとしたイベントということもあり、旅行客は公共交通機関で移動し、蔵開きで初めて発表されるその年の新酒を飲み比べるとともに、鹿島ならではの食や文化、歴史を楽しむことができる。有明海と多良岳、海と山の両方を擁する鹿島周辺の観光資源をじっくりと味わう旅のスタイルが、国内外の和食ブームと相まって大ヒットした格好だ。

もともと、清らかな水と美味しい米に恵まれた鹿島は、江戸時代(1603年–1868年)から酒造が盛んだった。酒蔵ツーリズムの会場の一つともなる肥前浜宿には、江戸から明治にかけて創業した酒蔵が集まり、武家造りや茅葺きの町家など、古きよき時代を感じさせる町並みが続く指定保存地区となっている。また、肥前浜宿からほど近い祐徳稲荷神社は日本三大稲荷の一つに数えられ(残りの2つは京都市の伏見稲荷大社と愛知県の豊川稲荷、しかし文献によって異なることもある)、従来から年間300万人もの参拝客で賑わう、名高い観光名所でもある。

「祐徳稲荷神社は商売繁盛や家運繁栄のご利益があり、以前から台湾や中国・韓国など、アジアからの旅行客がたくさんいらっしゃるのですよ」と語るのは、祐徳稲荷のお神酒の造り手でもある幸姫(さちひめ)酒造株式会社代表取締役社長の峰松幸弘氏だ。極彩色の壮麗な社殿はタイの大人気ドラマのロケ地ともなり、タイからの旅行客も増えた。隣県には佐世保の米軍基地があり、アメリカ人の旅行客も多い。

観光酒造として見学できるよう酒蔵を開放している幸姫酒造では、「外国人旅行客には、英語で書いた酒醸造の説明書を提供して酒蔵を案内します。最後に我が社で作った酒を無料で飲み比べてもらいますが、特に日本酒で漬けた梅酒が一番人気です」と峰松氏はいう。

鹿島酒蔵ツーリズムの中心となる推進協議会の会長を務める、峰松酒造場社長の峰松一清氏は「この土地の酒蔵は、みんなもともと仲が良い。だからこのような試みができるのですよ」と故郷への深い愛情を滲ませるように話す。2015年からは、酒蔵ツーリズムに近隣地区の酒蔵や嬉野温泉、JR九州も事業者として参加する。

協議会としてもツーリズムの広域化を目指し、交通の充実、知識のあるスタッフの増員など、受け入れ体制のさらなる整備を推進していく構えだ。「鹿島の地元の酒が国内外からいらっしゃった皆さんに飲んでもらえ、その美味しさを知ってもらえるのが何より嬉しい」と峰松一清氏は目を細めた。



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