Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan April 2015>47の物語

Highlighting JAPAN

previous

連載 47の物語

山梨

山々と豊かな自然(仮訳)




その山は存在感がある。山梨県のあらゆるところから見える富士山は、果物と花にあふれる緑豊かな谷を擁する森と山の大地を見下ろしている。夏にはその頂上を極めようとする数多くの登山者が訪れる。春には日本のシンボルともいえる桜と富士山の風景が、まるで絵はがきのようだ。

昔から神が宿る山としてあがめられ、時には恐れられてきたこの眠っている火山にはいくつかの登山ルートがある。もっとも多くの人が登るのが、山梨県の南部、富士吉田市及び河口湖付近から登る吉田ルートだ。毎年約18万人もの登山客がここから登山道に入り、麓の北口本宮冨士浅間神社に立ち寄る。富士山は今では世界遺産として知られるが、山は何千年もの間、多くの人々の信仰の対象になってきた。この神社の起源は1900年前に遡り、「富士講」というこの山を信仰する人々の拠点でもある。

山梨に来たら、地元の腹持ちのいい食べ物であるうどんに似た料理「ほうとう」を食べておくのがいいかもしれない。ほうとうの専門店、浅間茶屋の麺は小麦粉からつくられた手切りの太麺だが、うどんと同じなのはここまで。うどんより太いほうとうの麺は、スープと別にゆでられるのではなく、白味噌仕立てのスープに直接入れて煮るので、スープは麺の小麦粉と混ざりシチューのようになる。ごぼうや椎茸、人参やかぼちゃなどの山の幸がふんだんに入っている。

富士山の登頂を目指さずとも、その姿を眺めたいという人は「カチカチ山」のロープウェイをお勧めする。太宰治の短編小説や有名な民話で伝説となったカチカチ山は、その1075メートルの山頂から河口湖と富士山の絶景を楽しむことができる。民話に登場するタヌキとウサギの銅像が展望台の近くに立っており、それにちなんだ「たぬき団子」(富士山の絵が描かれた大きくてフワフワの餅にみたらしがかかった食べ物)も売っている。

山梨県の名物は富士山だけではない。急峻な山々に囲まれた緑豊かな平地は寒暖の差が激しく、日照もよいので果樹の生育には理想的な土地だ。果実の県はさまざまな果物の主要な産地として知られ、いちごや桃、すももやさくらんぼ、そして何と言ってもぶどうである。山梨県は日本でもっともワイナリーの多い県で、80以上のワイナリーと100種以上のぶどうがある。

シャトー・メルシャンはそのワイナリーのひとつで、1世紀以上にわたってワインを生産し、30種類以上のワインをつくっている。ワイナリーは、メルローやカベルネ・ソービニヨン、シャルドネなどとともに、マスカット・ベイリー Aや甲州種など、日本で改良されたぶどうも使って和食によく合うワインを生産している。海外の日本大使館などで各国の要人に日本のワインの紹介として出されるなど、これらのワインはアメリカ西海岸やイギリスなどでも知られるようになってきた。このワイナリーを訪れた人たちは自然の中でぶどう畑とそれを取り囲む山々を眺めながら、グラスに注がれた山梨の自然の美しさと豊かさを味わうことができる。

富士山の麓に広がるこの場所は、歴史や世界遺産、素晴らしい景色や食べ物などを提供し、どの季節においても行く価値の高い旅先である。



previous