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女性の活躍

近藤麻理恵

人生を変える魔法(仮訳)

米TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、全世界で著書のセールスは300万部超。片づけの伝道師、近藤麻理恵氏が支持される理由とは何か。


2015年は、近藤麻理恵氏にとって特別な年となるだろう。米TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、彼女は作家・村上春樹や著名な女優エマ・ワトソンと同じレッドカーペットを歩いた。著書『人生がときめく片づけの魔法』はニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナル、英タイムズなど欧米の名だたるメディアで取り上げられ、全世界で計300万部を超えるベストセラーとなった。日本人が書いた実用書のセールスとしては異例だ。

彼女の著書を読んで整理法を実践した人々は、ビフォアアフターを誇らしげにSNSにアップする。その劇的な効果を見た人がまた、近藤麻理恵(こんまり)メソッドに興味を持って著書を読み、片づけを実践するという魔法のような連鎖が続いている。

「kondo」という動詞も生まれ、それは部屋をこんまりメソッドで片づけることを意味する。近藤氏は「魔法」や「ときめき」というファンタジックな言葉で部屋の整理法を表現するが、メソッド自体は持ち物の選別の仕方、畳み方、収納の仕方など、非常に論理的で明確だ。

一方で、ものを擬人化する日本的な精神を大切にしており、ものに感謝の言葉を述べてから処分する「儀式」に、エコロジー時代の人々が国籍を問わず共感する。親しみやすく可愛らしい用語の響きや「禅」を感じさせる日本的な思想と、実際に整然と片づけられた結果の劇的なギャップが感動を呼び、ブームとなっているのだ。

近藤氏は、自他共に認める「片づけオタク」だという。幼い頃から家事に興味があったが、唯一不得意なのが片づけだった。そこから彼女は持ち前の知性で、より効率的に、より綺麗に片づけるための研究に没頭する。会社勤めを経験したのち、趣味を超えて生き方の一部ともなっていた片づけを仕事にするべく、片づけコンサルタントとして異色の独立をした。

「生活環境をもっとよくしたい、と片づけで悩む人はとても多い。彼らに自己解決のための明確な方法を提示できていることが評価されていると思う」と近藤さんは語る。片づけをすると、スペースができて部屋が広く感じられるだけではない。自分が何を所有していて何が不要で、何を欲しいと願っているのかも自覚することができる。

「片づけを通して自分の生き方を見直し、人間関係や恋愛、仕事などを自分が今後どうするか考えることができる」。彼女の片づけ法は、現代人の人生の悩みをも解決している。

日本において、彼女の世代では男女問わず働くことが当然であり、社会に自分を売り込み発信するため、自分の強みとはなにかと内省する経験が多い世代だった。自分の強みは片づけである、と信念を持って世界に認められる近藤氏は、強靭な精神と専門性を備えた、新世代の日本女性である。

2015年7月、近藤氏は第一子となる女の子を出産し、この1年が彼女にとってさらに特別なものとなった。「いま人生がときめいている」と言う近藤さんは、「ときめきあふれる家庭を作りながら、引き続き、世界の片づけに貢献していきたい」と抱負を語ってくれた。

 



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