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Highlighting JAPAN

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日本のスポーツ

東京がひとつになる日。(仮訳)

2016年で10回目を迎える東京マラソンは、参加申込者が定員を超え、世界各国から3万7000人のランナーが集う大規模かつ世界的なマラソンへと成長した。


2007年に始まり、来年で10回目の開催を迎える東京マラソン。いまや3万6000人のランナー、1万人以上のボランティア、150万人を超える観衆を集める世界屈指の規模に成長し、2012年秋には世界最高峰のマラソンシリーズ「ワールドマラソンメジャーズ」のアジア初の一員として、ロンドンマラソン、ニューヨークシティマラソンなどと肩を並べている。2015年の統計では全体の約15%を占める5317名が外国人走者で、5カ国語による多言語対応ボランティアも導入、65カ国でテレビ中継が実施され、海外からの注目度も年々高まっている。

東京マラソンの急成長と国内外からの人気の秘密とは何なのか。東京マラソン レースディレクター早野忠昭氏は、「それは、日本人の持つホスピタリティや参加者の情熱が、東京を舞台に一体となるイベントだからです。文字通り『東京が一つになる日。』なのです」と、2016年大会ポスターのロゴマークを指し示した。太さや色の異なる何本もの直線が絡み合うようにして大きな円を形作るそのマークは、ランナーやボランティアや観客一人一人の物語が一枚のタペストリーを織りなしていく、東京マラソンの理念を描いたものだ。

東京マラソンは、マラソンをエリートだけでなく一般市民へと裾野を広げ、日本のスポーツシーンを変えたと言われる。健康要素だけでなくファッションや音楽を絡め、ランニングをライフスタイル化するマーケティングに成功した。美容に関心の高い女性、漠然と健康不安を感じる中年層、退屈な毎日に新たな刺激を求める若者などが、東京マラソンの観戦をきっかけに奮起して走り始める現象が沸き起こり、ランニングを楽しむ市民の姿は日本の風景として定着した。

国内ランナーのみならず、アジアや中東、欧州、北南米からもランナーが東京マラソンを目指し、いまや出走権抽選倍率は10倍を上回る。都庁や皇居、東京タワー、銀座、浅草など東京の清潔で美しい街並みを巡る観光要素の高いコースも外国人ランナーに人気だ。参加後のアンケートには「沿道で日本の観衆が途切れることなくかけてくれる声援と、ボランティアの礼儀正しく温かいもてなしに感動した」との声が根強い。大会前後のイベント満載の「東京マラソンウィーク」を利用して、家族を連れて訪日し、ついでの日本観光やショッピングなどを堪能するランナーも多い。

資料や標示、ボランティアの多言語化を進め、またランドクターやランポリス、「現時点でスポーツ団体では国内で我々だけ」と早野氏が胸を張る万全のテロ対策など、安全面にもぬかりがない。そんな東京マラソンの出走権抽選に当選した外国人ランナーからは「ずっと東京マラソンに出るのが夢だった。夢が叶った」との声も寄せられるという。

東京マラソンは進化を恐れない。欧米型のチャリティ文化を日本にも普及するべく、チャリティ出走枠に寄せられる寄付金の運用先に、スポーツの夢や広がりを応援する「スポーツレガシー事業」を加えた。2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックも視野に入れ、持続的なスポーツ文化を構築する。

早野氏はこれまでの実績に確かな自信を滲ませつつ、「今後は『世界一エキサイティングで、温かく安全で、楽しい大会』を目指したい」と展望を語った。それぞれが織りなすストーリーを表す新ロゴデザインが示すように、真っ白なキャンバスに描かれるドラマは参加者次第だ。

 

 

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