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Highlighting JAPAN

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女性の活躍

酒井里奈

好循環を醸成する(仮訳)

酒井里奈氏の会社、ファーメンステーションは岩手県奥州市の地元企業と協力し、米を原料とするエタノール、そして家畜の餌やその他製品を製造し、自立的な地域社会を創出している。


酒井氏が代表を務める株式会社ファーメンステーション。この社名は英語の発酵(fermentation)と駅(station)を組み合わせた造語である。同社は伝統的な日本の発酵手順を現代のテクノロジーと結びつけ、これまでにない画期的な方法で企業と人々をつなげている。地域社会に循環型経済システムを築き、ブランディングすることを重視する彼女のビジネスモデルは、高い注目を集める。2014年には地域社会への貢献に対してブリティッシュ・ビジネス・アワードを受賞し、クリエイティブ・ビジネス・カップの日本代表にもなった。また、米由来のエタノールを用いた製品はソーシャルプロダクツ・アワードを受賞している。

酒井氏の起業家センスは金融業界に身をおいた経験に始まる。彼女は銀行の業務に携わる一方で、助成金とプログラム策定によりエネルギー関連のNPOを支援する機会も得た。その後、東京農業大学の教授が発酵の手順と生ごみのエネルギー化を論じる様子をテレビで見て、金融業界を離れる決意をし、同大学に入学した。酒井氏にとって科学的手法を学ぶことは大変だったが、このように語っている。「発酵は日本の伝統のひとつですから、この分野の文化的側面にも焦点を置くことができました。そして、私は発酵でビジネスを立ち上げる方法を見つけたかったのです」。

幸運なことに、奥州市の農業組合法人であるアグリ笹森も同じような考えを持っていた。それは休耕田に米を植え、エネルギーとして利用するという考えである。奥州市は彼らとの相談に基づいて東京農業大学に相談し、共同研究を依頼した。酒井氏は2009年に同大学を卒業し、このプロジェクトのアドバイザーを担った。その年の7月、米からエタノール燃料を製造するビジョンのもと、ファーメンステーションを設立した。会社は設立したものの、生産コストが高いために利益が出る事業を生み出すことはできなかった。しかし酒井氏はその後、同社が製造する高品質でオーガニックなエタノールは化粧品業界で使える可能性があることに気付くと、企業に販売することに加え、石鹸や消臭剤のような自社のオリジナル商品を作ることによって事業化に成功した。

それと同時に、米由来のエタノールの製造過程で多くの副産物が作られることもあって、 酒井氏は奥州市の「地域循環」、つまり地産地消にも興味を持った。酒井氏は当時をこう振り返る。「副産物を家畜の餌として提供してみようと思いました。近くの養鶏農家に持ち込んで鶏に与えてみると、あっという間に食べたのです。鶏にはとても人気がありました」。

また、これらの鶏は以前よりも高品質の卵を産むようになり、地元のパン屋でおいしいお菓子の原料となった。なお、鶏たちの糞は水田の素晴らしい肥料となり、今ではアグリ笹森が生産した米は人間の食用として販売されており、奥州市の持続可能な循環が確立されている。

酒井氏は語る。「循環しないビジネスでは、行う意味がありません。やっと軌道に乗ったというところです。いろいろな方に発酵とビジネスの循環をお話し、今後もファーメンステーションを広く知っていただけるのは嬉しいです」。

現在、多くの人が発酵と廃棄物削減の利点について認識し始めている。すでに全国各地の自治体がリサイクルに関するコンサルティングとクリエイティブなブランディングを求めて、ファーメンテーションに接触している。酒井氏はこのモデルが世界中で活用されることを夢見ているのだという。

 



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