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Highlighting JAPAN

適正体重の推進

International Nutrition Supplement adviser(国際栄養補助食品アドバイザー)の資格を持つ予防医療のエキスパート、細川モモ氏は、日本における女性の健康状態を調査、改善していくことを目指している。その主なターゲットは、低体重の女性たちだ。

多くの国では、女性たちが肥満に悩んでいるが、日本では体重不足の傾向がみられる。どちらの傾向も健康的とはいえない。細川モモ氏は、女性の健康に対する一般的な認識を変えたいと考えている。「Love(愛)」と「Intelligence(知性)」という2つの言葉を組み合わせた名称を冠した法人、Luvtelliの代表として、細川氏は、女性のための予防医療の研究、教育、推進に取り組んでいる。

細川氏が予防医療に初めて興味をもったのは、18歳のときだった。両親が、がんと診断されたのだ。病気を治療するだけでなく、健康的な生活を通じて病気を予防する方法を見つけたいと細川氏は考えた。当時の日本では、予防医療の研究が普及していなかったため、細川氏は20歳のときに米国に渡り、遺伝栄養学や公衆衛生学に触れて感銘を受けた。米国滞在中、日本では低体重の女性の比率が統計的に高いことを知った細川氏は、その理由を知りたいと考えた。

2009年、細川氏はLuvtelli Tokyo & New Yorkを設立した。「アメリカでは、治療、栄養、運動(リハビリ)、薬といった異分野の専門家がチーム医療で上下ではなく横につながりあっていることを知りました」と細川氏は振り返る。「日本でも、各分野の知識を持つ人々を集め、同じようなチームをつくることで日本人の健康に貢献したいと思いました」。細川氏にとってLuvtelliは、日本で予防医療を推進していく一方で、研究によって、日本人女性に悪影響を及ぼしている問題をさらに理解するためのものだった。

2014年8月から2015年3月まで、Luvtelliは三菱地所とともにWill Conscious Marunouchiプロジェクトを実施して、東京丸の内で働く女性たちを招き、測定とカウンセリングのために「保健室」の受診を促した。このプロジェクトで集められた1,022名のデータから、女性の大部分が自分の健康や身体について基本的な理解を持ちあわせていないことに細川氏は気づいた。日本の多くの女性は、単純にスリムだったり、痩せていたりすることが健康なのだと考えている。

「低BMIと低体脂肪率に関連する健康リスクについて知っているかどうかを尋ねたところ、約60%の女性はその危険性に関する知識を持っていませんでした。低体重のリスクについて説明したうえで、健康習慣を改善しようと思うかどうか尋ねてみると、約87%が改善したいと回答しました。つまり、これは教育不足の問題なのです」と細川氏は述べる。

細川氏は、働く女性たちの大部分が朝食を摂っておらず、アルコールや揚げ物の摂取量が増えるといった食生活に偏りが生じるリスクが高いため、適切な栄養を摂取していないことにも懸念を感じていた。女性の健康を改善していくためには、教育だけでなく、推進活動も必要だと細川は考えている。「企業は、例えば運動の時間を提供したり、職場において朝食やヘルシーなおやつを提供したりするなど、社員の健康に関わる必要があります」と細川氏は提案する。「健康と予防に関する教育と推進活動についての情報も、メディアの記事やキャンペーンを通じて知る機会を増やすべきでしょう」。

2011年から、細川氏はミス・ユニバース・ジャパンの出場者をサポートしている。ビューティーキャンプの栄養コンサルタントとして、まず細川氏は一部の出場者のBMIの低さ、さらに食事や栄養に関する誤解に驚いた。食べてもよいのだ、と教えてくれたのは細川氏が初めてだという出場者もいた。

「出場者の皆さんと3~4ヵ月間一緒に過ごしましたが、健康と美はセットであることを伝え、バランスよく食べて運動量を増やすようアドバイスしました」と細川氏は語る。「キャンプ中は皆さん食事量を増やし、筋肉量も増していますが、以前よりも引き締まって見え、栄養状態が改善されて健康になっています」。ビューティーキャンプが終わる頃には、食生活に関する資格を取る人も増え、細川氏は喜んだ。

低体重の若年女性たちの教育と推進活動を継続していくことは、やがて生まれてくる子供たちの健康に貢献することに繋がると信じ、妊婦への栄養教育・研究にも取り組んでいる。彼女の次のステップは、Luvtelliの活動の幅を広げ、首都圏以外の働く女性のデータ集めを続けていくことだ。

細川氏は次のように話す。「食習慣や運動習慣は地域によって異なります。例えば、北海道に住む人々は他の地域よりも魚を多く食べているかもしれません。しかし、まずはデータを収集して各地域の問題を明らかにし、適切な健康キャンペーンを行っていく方法を見出すことが必要です」。