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Highlighting JAPAN

ロボットが向かう未来

ロボットや人工知能の進化により、人々の生活はより便利に、より快適に変化し、さらなる発展に期待が集まっている。日本におけるロボット工学のこれまでの歩みと未来を、産業技術総合研究所知能システム研究部門長の横井一仁博士に伺った。

――これまでの日本のロボット市場の歩みと現状を教えてください。

日本では1972年に日本ロボット工業会が発足したことを皮切りに、70年代は様々な企業研究者が活躍し、実用化が模索されました。そして日本のロボット元年とされる1980年以降、産業ロボットの実社会での普及が進んだのです。

経済悪化で一度は下火となったロボット産業ですが、現在再び盛んになってきています。本田技研による人型の二足歩行ロボットP2が登場して衝撃を与えたのは1996年のこと。近年はSoft BankのコミュニケーションロボットPepperが大々的に広がるなど、人々の暮らしの中で役に立つロボットもすっかり普及し、生活支援分野ロボットの発展に期待が寄せられています。

――ロボット技術導入の進む業界とその傾向についてお聞かせください。

掃除ロボットRoombaや医療ロボットda Vinciなどに見られる既存技術のロボット化が進み、今後は完全自動運転のGoogle carや、物流ドローンのAmazon drone Prime Airに代表される、身近なサービス分野でのロボット応用が広がるでしょう。また、PAROやPepper、JIBOなどの人に寄り添うコミュニケーションロボットにはセラピー機能が期待され、現代社会では大きな需要があります。

産業用ロボットが発達する日本では、ヒトとロボットの協働が進んでいます。食品・化粧品・医薬品分野では特に産業用ロボットの導入が進むと見られています。今後は人工知能を搭載して自律的に判断するロボットも登場するでしょう。対人安全性認証の枠組みが確立され、介助支援用ロボットスーツなどの装着型ロボットや自律走行車椅子など、ヒトと接触するロボットの普及も後押しされています。

――現在、次世代ロボットの開発はどこまで進んでいますか。

2011年の福島第一原子力発電所事故を受け、フィールドロボットの研究が進んでいます。産総研(AIST)とホンダが組み、ASIMOの技術を応用して高所調査用ロボットを開発し、すでに福島第一原発に投入されました。また、現在AISTでは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトにおいて、事前の動作計画のティーチングができない未知の環境でも自律的に動作する災害対応ヒューマノイドロボットや、事前予防や点検を行ってインフラ維持管理・更新等を行うフィールドロボットを作っています。しかし、災害対応ヒューマノイドロボットの実用化はもう少し先になるでしょう。

――将来に向けて、日本のロボット産業はどう進んでいくのでしょうか。

日本はロボット大国である一方、少子高齢化やインフラの老朽化、第一次産業の担い手減少など、ロボットが期待される課題先進国でもあります。産業機械から消費財まで私たちの日常を構成している「モノ」がインターネットで繋がるInternet of ThingsすなわちIoT時代の到来はビッグデータやネットワークなどデータ駆動型の時代ともいえ、人工知能を使いこなせるロボットへの転換も迫られています。日本も社会問題の解決や国際競争力の強化を通じて、ロボットが新たな付加価値を生み出す社会を実現し、世界一のロボット利活用社会として世界をリードすることが期待されています。