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Highlighting JAPAN

探し求めていたヒト型ロボット

グローリー株式会社の革新的な生産ラインでは、次世代のヒト型ロボットNEXTAGEを導入し、通貨処理機の細かく繊細な組立てをヒトとロボットが共存して行っている。

「世界中からたくさんの方が視察に来られますが、以前フランスの企業の方が来られた時は、この生産ラインを見て驚き、ずっと『クレイジー!』と連呼しておられましたね」。グローリー株式会社 埼玉工場生産技術2部部長 飛田昭夫氏は苦笑する。技術者にとって、クレイジーとは「夢物語のようなことを現実にした」という、その技術や発想への最上級の褒め言葉でもある。

目の前にあるのは、カワダロボティクス株式会社製の次世代ヒト型ロボットNEXTAGE数体を囲むようにして作られた作業台に人間の従業員がつき、レジ釣銭機のパーツを組み立てる15メートル四方ほどの生産ラインだ。2014年には、ヒト型ロボットを活用した工場として安倍総理大臣が視察に訪れた。

グローリーが生産現場のロボット化に着手したのは24年前。日本企業がコスト削減を求めて工場の海外移転を進める「産業の空洞化」の中、コスト面・品質面で優位に立つため、グローリーでは生産自動化の模索が始まった。「多関節ロボット導入を皮切りに、自動化生産ラインを内製する技術を蓄積してきた」と飛田氏は胸を張る。2009年に国際ロボット展でカワダロボティクス社のNEXTAGEと出会い「弊社の自動化に非常にマッチすると判断した」という。

2011年に1台を試験的に導入し、細かなハンドパーツや現場の周辺環境機器は自社で内製するなど試行錯誤の末、現在埼玉工場では300人弱が実際の製造に携わる中、ロボット19台が稼働中だ。NEXTAGEは、ヒトと共存する環境で安全に作業することを目標にデザインされた。80Wの出力しかなく、片手で約1.5キロまでのものしか持てないが、位置を認識して組み立てることに秀でる。

「つかむ、剥がす、挿入するなどの細かな作業も可能ですが、曖昧で柔軟性の高い作業は人間が行い、ヒトとロボットがそれぞれ得意な部分で協調しています。ロボットは人間よりもスピードは若干遅い分、朝8時半から夜中の12時まで休みなく稼働してくれます」。時おり微妙な調整を必要として停止することもあるが、ヒトが補助して再稼働させる。高い労働生産性と品質の安定、費用対効果を追求した結果、ロボットの合理性と人間の柔軟性をフルに生かした共存型生産ラインの構築に成功した。

ロボットの胸には、同社の主力製品である金融機関向けの外貨処理機にちなんで、「ユーロ」や「ドル」といった世界各国の通貨にゆかりのある名前で名札がついているのがユーモラスだ。片手ずつ別の作業が可能で、まるで人間のような仕草にも親しみが沸く。現場で協働する従業員は「初めはびっくりしたけれど慣れました。作業は速く楽になりましたし、この子たちは自分が組み立てたものに自信がないと作業台に斜めに置いて意思表示をしたり、別の子の作業が終わるのをちらっと見て待っていたりして、とても可愛いんですよ。見ていて和みます」と笑った。

「労働人口が減少する日本では、ロボット化は必然です。ロボットに仕事をさせても、設計や改善などの運用や、曖昧で柔軟な部分は人間の仕事。ロボット化が進んでも人間しかできない仕事はたくさんあります」と飛田氏。「今後はNEXTAGEだけでなく様々なロボットを使って生産性を上げるよう、自動化の技術力を高めていきたい」という。