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Highlighting JAPAN

スタイリッシュに詰め込む

日本人にはおなじみの弁当箱を世界約90カ国の人々に販売し、その魅力を広く発信しているベルトラン・トマ氏。フランス語の辞書に「Bento」が載るほどの一大ブームを巻き起こした、火付け役的存在だ。

フランス出身のベルトラン・トマ氏が初めて日本を訪れたのは2003年8月のこと。京都大学への留学のためだった。「1980年代のフランスでは、『ドラゴンボール』や『キャプテン翼』など、日本のアニメが大人気でした。ファミコンをはじめとするテレビゲームも流行っていて、もちろん私もそれらに親しんで育ってきました。ですから、日本にはとても興味を持っており、日本の歴史や文化、経済を学ぶために留学したのです」。

2005年、ベルトラン氏は京都での生活や日本の文化などをテーマにしたブログを開設した。ブログの人気が高まることでフランス人ジャーナリストや関西在住のフランス人など、多くの人とのコネクションができ、それがビジネスを始めるきっかけになったという。ただ、「日本ならではのモノを海外に紹介したい」という着想はあったが、肝心の「モノ」はすぐには見つからなかった。

2008年、フランスに住む母親から、フランスの雑誌で日本の弁当箱が特集として紹介されていることを教えられ、「これだ!」と確信した。彼は、弁当を紹介するサイトはたくさんあるものの、弁当箱を販売するサイトがほとんどないことに気がついた。そこからベルトラン氏の行動は早かった。翌日にはメーカーからカタログを取り寄せ、10種類・約5万円分の在庫を確保した。サイトの構成やデザインは、ブログで知り合った友人たちに協力してもらい、約2週間後には弁当箱のサイトをオープンさせた。

豊かで充実した食文化を持つフランス。三つ星シェフの料理教室に通う人も多く、日本の弁当箱は、美しくて美味しい料理を楽しみたいというフランス人の美的な心にピッタリとはまった。さらに、リーマンショックの影響で、高価な外食を控え、昼食を自分で用意する人が増えたという時代背景もあり、スタート当初から予想以上の成果を上げた。

その後、英語のブログで紹介されたことを機にアメリカやイギリスからの注文も増え、2010年には英語版サイトもオープン。今では北米や欧州、アジアの各国をはじめ、イスラエルやトーゴといった国々も含む世界90カ国から注文を受けるまでに成長した。海外の百貨店やレストランなどへの卸売販売も行い、2012年には京都市内にBento&Co専門店もオープンさせた。

商品のラインナップは1000種類を超え、オリジナル商品も15種を揃える。商品を選ぶ基準は、「私が好きだと思えるかどうか」といたってシンプルだ。もともとメーカーにあった商品をアレンジし、人気商品としてよみがえらせた弁当箱も多いという。

取引先の中には、海外売上比率が10%を超えるメーカーも増え、互いの信頼や関係性も年々深まっている。最近では、パリで開催される欧州最大のインテリア・デザイン見本市「メゾン・エ・オブジェ」や、シドニーで開催される「ギフトフェア」にもメーカー担当者と一緒に出かけているという。

「何かが生まれるのはすべて人とのつながりから。当社のベストセラーでもあるHAKOYA 二段弁当箱は、たまたまこけしを見て、こんな弁当箱があったら面白いねというメーカーさんとの何気ない会話から生まれたものなんです」とベルトラン氏は語る。

現在は、ケータリング用やホテル・レストランに向けた紙製の弁当箱の製作にも着手している。文房具や食品、調理器具など、商品の幅も広げ、2016年2月と11月には、パリで期間限定のショップも開くなど、活躍の場を世界に広げている。

Bento&Coのテーマは、『日本をもっと近く』。ベルトラン氏はいう。「弁当箱をはじめとする日本にあるよいモノを全世界に発信し、それらがどこからでも簡単に注文できて、スムーズにお客様のもとへ届けられるようにしたいと思っています」。