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Highlighting JAPAN

宇宙のキャンバス

岡島礼奈氏と彼女が立ち上げたALE社は、人工流星プロジェクトで科学とアート、エンターテインメントを融合させ、宇宙を舞台とした星のエンターテイメントを作り出そうとしている。

鮮やかな色彩の流星群が夜空から流れ落ちてくる光景を想像してみよう――地球上で作られた人工の流星シャワーが人工衛星から放出され、地上にいる観客たちを魅了する。このアイデアは、東京大学で天文学の博士号を取得した岡島礼奈氏によるものだ。彼女と株式会社ALEの仲間たちは、成層圏で人工流星を放出し、将来的には成層圏の先へも目指したいという岡島氏の夢を実現するため尽力している。

「流星を見られる機会は一般の方々にとっては貴重なものです」と岡島氏は話す。「2つの流星が同時に視界に飛び込んでくるのを見ることができた人は幸運です。私は、流星がシャワーのように降り注ぐ光景をいつも夢見てきました」。2011年、彼女は同じようなビジョンを持った人々を集め、ALE社を設立した。

幼い頃から科学に関心を持っていた岡島氏は、中学生のときにブラックホールや宇宙の創成、ビッグバン理論について学び、それから宇宙に興味を注ぐようになった。東京大学で天文学の勉強に専念している頃には、日本が宇宙開発のための科学研究や設備に多額の公的資金を投資していることを知った。

しかし、岡島氏は従来の宇宙開発とは別の方法で宇宙探査することを思い描いていた。彼女のアプローチは、人工流星の製造を営利事業の基盤に据えつつ、一般の人々と天文学、科学の間に接点を作ることを目指している。「天文学は実用的な科学ではないと思われることがよくあります。でも私は、宇宙に楽しみを見出すよう人々を促すとともに、科学研究にも貢献することができると考えています」と岡島氏は語る。

ALEは流星を作り出すために必要な研究の半分を完了させた。様々な大学の教授や研究者たちと協力することにより、同チームは流星源となる小さな球体を作り上げ、数千もの小さな球体を搭載した、直径50センチほどのキューブ状の人工衛星の開発を始めている。その球体は人工衛星から放出され、地球の大気圏に突入すると燃焼して鮮やかな光を放つ。球体ごとに成分を変え、様々な色合いを作り出すこともできる。流星の種は全て燃え尽きるので環境への影響もほとんどない。

「自然発生した流星は1秒に満たない間しか見ることができません。でも、私たちの流星は約2~3秒の間見ることができます。また、200キロメートルの範囲内で観察することが可能です」と岡島氏は付け加える。これは一般的な花火が見られる範囲の約400倍だ。

これらの人工流星を作るための研究が峠を越えつつある今、岡島氏は壮観な光景を作り出すためのアートの側面に集中している。彼女は様々なアーティストと協力し、人々が人工流星に願いをかけるための場所や時間帯を計画している。Sky Canvasというプロジェクト名のもと、科学者たちやアーティストたちが集い、アイデアを交換している。

「多くのプロジェクトでは、たくさんの異なるアイデアをもった人々が集まりすぎると問題になることがあります。でも、Sky Canvasでは、多いほど良いのです。アイデアは多種多様ですが、全員が同じゴールに向かって取り組んでいるからです」と岡島氏はいう。これまでにあった提案のなかには、東北地方を支援するLight Up Nipponなどの地域プロモーションや、2020年東京オリンピックの開会式といった大規模な国際イベントも含まれている。また、夜空をキャンバスにすることで、日本国外でも確実に多くのチャンスを見出すことができる。「私たちは、常に世界をビジネスの対象として考えてきました」。

計画通りに進んだ場合、ALE社の人工流星は2017年の年末か2018年の前半までに宇宙を彩ることとなる。それまでの間、同社は試作品を開発し、ロケットのなかにスペースを確保し、プロモーションを通じて支持基盤を拡大する予定だ。将来のプロジェクトについて尋ねたところ、岡島氏は地球の近くの軌道は第一歩にしか過ぎないと語った。「スペースエンターテインメントとして宇宙のもっと遠くて深いところまで行きたいと考えています」。