Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan July 2016>日本とアフリカ

Highlighting JAPAN

アフリカで活躍する青年海外協力隊

青年海外協力隊(JOCV)は日本人の若者が開発途上国の発展を支援することを目的に1965年に設立された。これまで派遣された約4万人の隊員のうち、アフリカには約1万3千人が派遣されており、医療、農業、教育など幅広い分野で活躍している。その一人、坪田彩さんもウガンダの病院で看護師として活動している。

青年海外協力隊(JOCV)は、「開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与」「異文化社会における相互理解の深化と共生」「ボランティア経験を活かした社会貢献」を目的とする国際協力機構(JICA)の制度である。

JOCVには、20〜39歳の日本人が参加することができる。派遣期間は原則2年。活動分野は、教育、農業、保健、IT、電気、自動車整備、スポーツ、障がい者支援など多岐にわたり、51年間で、88か国に累計約4万1千人が派遣されている。最も多くのJOCVが派遣されている国がアフリカのマラウイで、約1700人にのぼる。これを含め、アフリカには累計約1万3千人のJOCVが派遣されており、アジアと並んで、主な派遣地域となっている。

坪田彩さんは2015年4月から、JOCVとしてジンジャ病院に派遣されている看護師である。病院は首都カンパラから車で2時間程のところにある。

「病院の看護師の数は少なく、薬や医療器具も不足しています」と坪田さんは言う。「厳しい中で、笑顔を絶やさず患者と接している現地の看護師には、本当に感動します」

日本の国立病院で看護師として約3年勤務した経験のある坪田さんは、病院の業務環境を改善し、医療サービスの向上を図るために、病院内で「5S」の普及に取り組んでいる。

5S活動として、坪田さんが最初に取り組んだのが薬剤保管棚の整理である。その棚は多くの薬、注射器、カルテが乱雑に置かれている状態だった。坪田さんは看護師などのスタッフとともに、薬や医療器具を入れる箱を段ボールで作り、それぞれの箱に医療器具や薬の名前を書いたラベルを貼った。その後も、薬や医療器具があるべき箱に戻されていないといったことが続いたが、3か月程かかって、スタッフも必要な手順にも慣れ、自主的に整理できるようになった。

「看護師は一人で30人以上の患者さんを看ていますので、非常に忙しいです」と坪田さんは言う。「そうした合間をぬって、スタッフと話し合い、アイデアを共有することがとても大切でした」

坪田さんが頭を痛めることの一つが物の不足だ。薬品や医療器具はもちろんのこと、ハサミ、セロファンテープ、ファイルといった物も十分にはない。そのため、手に入る物を有効活用する知恵が求められる。そうした知恵が発揮された例が、段ボールを使った患者カルテ用ファイル作りである。これまで、妊産婦など患者の入退院が多い婦人科病棟では、患者の情報をノートに手書きで記入したカルテがしばしば紛失していた。ノートの紙は薄く、破れやすいからである。坪田さんは看護師と協力して、段ボールをノートの大きさに切り、テープで貼ったファイルを作った。患者のベッドの番号をファイルの背表紙に記載することで、いつでも簡単にカルテを見つけられるようになった。

「スタッフは非常に忙しいため、不満足な状況を変えようとする意欲がわかないのです。」と坪田さんは言う。「しかし、同じ状況の中で実施した5S活動の効果を目にして、彼女たちは自分たちの力で状況を変えられるのだということを実感するのです」

5Sは非常に地道な活動で、医療サービスの質の向上という成果が見えにくいため、坪田さんのモチベーションが下がる時もあった。しかし、ある看護師から「今、彩が行っていることは、私たちの助けになっているのよ。患者さんもその恩恵を受けている。だから、もっと自信を持って良いのよ」と励まされた。

「彼女が5S活動の意味を深く理解していることに、心が温まりました」と坪田さんは言う。「将来はウガンダでの経験を活かし、国際看護の講師となり、開発途上国における看護分野の支援についての研究や人材育成に携わりたいです」