Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan July 2016>日本とアフリカ

Highlighting JAPAN

世代をつなぐ橋

コンゴ川に建設されたマタディ橋には、完成から30年以上経った今も、日本の技術支援が継続している。

大西洋からコンゴ川を約150㎞遡上した、コンゴ民主共和国のマタディ河川港に架けられたマタディ橋は、コンゴ川の中・下流域で架かる唯一の橋である。大西洋の港と首都キンシャサを結ぶ幹線道路にある全長722mのマタディ橋は、コンゴ民主共和国の陸上交通にとって極めて重要な橋である。

マタディ橋は1983年、日本と当時のザイールとの間で結ばれた円借款によって完成した。しかし、1996年に内戦が勃発し、日本は橋の維持管理に必要な技術支援の中止を余儀なくされた。2012年に長い混乱が収束すると、日本の支援再開を求めるコンゴ民主共和国政府の要請に応え、国際協力機構(JICA)は「マタディ橋維持管理能力向上プロジェクト」をスタートさせた。

プロジェクトの一環として、2012年から3度にわたって、マタディ橋の維持管理を行うバナナ・キンシャサ交通公団(OEBK)技術者が日本に招かれた。

本州四国連絡高速道路株式会社(以下、本四高速)で行われた研修では、道路収入の長期的な修繕計画への割り当てをテーマにした「管理運営能力」、そして、橋の定期点検・安全評価・記録などをテーマにした「橋梁点検技術」の2つのコースが実施された。

「研修では、OEBK職員たちの熱心さに非常に驚きました」と本四高速の竹内政彦氏は言う。「日本とコンゴ民主共和国の友好の象徴であるマタディ橋をいつまでも大切に守っていきたいという姿勢に感動を覚えました」

竹内氏は、2013年と2014年、2度にわたってコンゴ民主共和国に赴き、吊橋の維持管理の技術を教える職場内訓練(OJT)も実施している。

「2013年6月に初めてマタディ橋を訪れましたが、橋は思った以上に良好な状態を保っていました」と竹内氏は言う。「ただ、OEBKには、塗装、コンクリート、舗装などの劣化メカニズムの試験を行う研究施設がないため、その対応策を具体的に立てるのが困難でした。そうした時に役立ったのは、我々が日本で長年にわたり積み重ねてきたノウハウでした」

本四高速は、45年以上にわたって、世界最長(3911m)の吊橋である明石海峡大橋など、数多くの巨大橋梁の建設、維持管理を手がけてきた。こうして蓄積された知識や技術がOEBK職員達にも伝えられたのだ。その一つが、「主ケーブル乾燥空気送気システム」である。世界で初めて明石海峡大橋で実用化されたこのシステムは、除塵・除塩・除湿した大気を、橋を支える主ケーブル内に送り込むことにより、ケーブルの腐食を防止し、ケーブルの耐久性を格段に向上させる。このシステムがマタディ橋にも導入される。

「私たちにとって、今回のプロジェクトは非常に満足のいくものでした」と竹内氏は言う。「マタディ橋の建設当時を知り、その後の維持管理で重要な役割を果たした2人のベテラン技術者だけではなく、次世代を担う若い技術者にも、知識をしっかりと伝えられました」

マタディ橋は、その美しい佇まいから、ハネムーナーが写真を撮る格好の背景になっているという。人々から愛されるその橋は、これらもその美しさを保ち続けていくだろう。