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Highlighting JAPAN

アフリカの時代へ

8月、ケニアで第6回アフリカ開発会議(TICAD VI) は日本国外で初めて開催される。「ナイロビサミット」に先立ち、ソロモン・マイナ・ケニア共和国特命全権大使に話を聞いた。

1993年に第1回の会議が開かれて以降、TICADはアフリカの開発にどのような影響を与えてきたでしょうか。

TICADが組織されたのは23年前、「援助疲れ」がより明らかになった時期でした。しかし、TICADによって新たな章の幕が開いたのです。日本政府、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会、国連アフリカ特別顧問室という5つの組織が中心となっているという事実が、TICADを他(の国家とアフリカとの協定)とは異なる次元のものにしています。 援助の問題からスタートしたTICADは、徐々にODAの調達の問題を検討するようになっていきました。現在は、インフラ開発、健康、人材育成、若年層や女性といった問題へと焦点がシフトしています。これらはすべて、「持続可能な開発のためのアジェンダ」、それ以前の「国連ミレニアム開発目標」(MDGs)に含まれている課題です。また、TICADプロセスはアフリカ連合の「アジェンダ2063」とも、しっかりと足並みをそろえています。現在の最重要課題の1つは民間セクターの関与で、TICAD VIでは、民間セクターに関する本会議を設ける予定です。これまでは民間セクターはサイドイベントにのみ参加してきましたが、今回は本会議でアフリカの首脳や安倍首相と直接対話することになります。つまり、TICADプロセスは、ODA関連の課題から民間セクターの関与へと、言い換えれば、援助から貿易へとシフトしているということです。その点に関して、ナイロビでの会議はターニングポイントになるでしょう。

TICAD Vで合意された横浜行動計画に関しては、どのような進展がありましたか。

TICAD Vは、6本の柱を軸とした成長を実現するため、5年間の行動計画を明確に打ち出しました。今年はその3年目に当たります。アフリカ大陸は今日、経済パフォーマンスという意味では世界のトップレベルにあります。例を挙げると、今年度のケニアの経済成長率は6.0%と推計されています。我が国のGDPの成長に最も貢献している分野はサービス産業で、GDPの61%を占めています。サービス産業は人がベースとなっています。TICAD Vイニシアティブの1つであるABEイニシアティブ(アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ)の下での日本における研修では、この点を重視しています。ABEイニシアティブで現在までに日本で勉強した473人の学生のうち97人がケニア出身者で、このことは我が国の教育的潜在力を雄弁に物語っています。ケニアの識字率は87%で、他のアフリカ諸国も同様に実績を挙げています。健康や国民皆医療保険の問題について見てみますと、幼児死亡率が低下したことがわかります。そして、出産時の女性の死亡率も大幅に低下しました。私たちは横浜行動計画のイニシアティブを推進し、それを完結させなければなりません。

なぜ、TICADの開催は5年に1回から3年に1回になったのですか。

TICAD Vの時に、サミットの頻度、決定の効果という点から、採択されました。3年間あれば、容易に達成可能な目標を設定することができます。例えば、統合という目的で、アフリカの40カ国で「ワンストップボーダーポスト」を実施する必要があると言えば、それは実現可能です。会議の頻度は非常に重要だと考えます。G7は毎年会合を開き、進行中の深刻な問題について議論しています。もし、暴力的な過激派やテロリズムといった問題についてTICADで議論するまで5年間待たなければならないとしたら、私たちはそれに対応することができないでしょう。

今日のアフリカにおける日本の民間セクターの取り組みについては、どのように評価されていますか。

日本の経済界のみなさんはおそらく、アフリカで革命が起こっていること、それがICTやサービス業によって引き起こされているということをあまりご存じないでしょう。例えば、ルワンダやケニアの子供たちは小学校でコンピュータを使用します。革新をもたらす能力を持つ若者たちやスタートアッププログラムの力で、経済を大きく押し上げることができるのだということがわかったのです。その良い例が、M-PESAモバイル[電話]送金システムです。私はアフリカの潜在力に対する認識を高めるためにセミナーに出席したり、インタビューを受けたり、外交活動を行うなど非常に忙しくしています。

先頃合意された日・ケニア投資協定は、両国にとってどのような意味を持っていますか。

これは、画期的な協定です。独立して以来50年間ずっと、ケニアは日本の援助対象国の上位に位置してきました。日本は我が国にぴったりと寄り添い、ケニアの潜在力と吸収力の高さを理解してくれています。日本の大企業による巨額の投資のおかげで、昨年にはオルカリアで大規模な地熱発電所の操業が始まりました。投資協定によって現在、日本との貿易関係の新たな道が開かれています。ケニアは低中間所得国にあります。二重課税問題は解決しました。エネルギー能力向上の問題に関しても、見込みは明るいです。それは、製造業が盛んになることを意味します。また、我が国の花、茶、コーヒー、マカダミアナッツなどといった輸出品についても、日本でのチャンスがさらに広がることでしょう。投資協定は、日本の投資家がケニアの新たな領域「ブルー・エコノミー」に着目することを促すでしょう。協定がケニアと日本との貿易の大きな不均衡を是正することにつながると期待しています。

ケニアのサファリには日本人が多く訪れていますか。

私は、我が国への渡航危険情報の解除を日本政府にお願いしているところです。テロリズムの脅威は世界に広がっており、国際社会がそれを阻止するために努力をしなければなりません。我が国にとって観光産業は非常に大きな収益源です。多くのヨーロッパ人観光客がホテルに滞在していることは喜ばしいですが、日本人観光客数はあまり多くありません。私たちは「Bilateral Air Services Agreement」を日本と結ぶ必要があります。その目標は、貿易を活発化させ、日本人観光客がケニアを訪れやすくすることです。

日本はケニアの声に耳を傾けていますか。

私は30年の経験を持つキャリア外交官ですが、日本は落ち着ける[心地よい]勤務地だと思っています。日本の外務省は、非常に親しみやすいです。(アフリカ開発会議事務局長の)丸山氏は多忙な方ですが、私のために時間を割いてくださいます。「ちょっと寄ってくださいよ」と言ってくれますから[笑]。私は主に民間セクターに携わっていますが、ミーティングが非常に励みになっています。日本では、ゴルフもとても重要なことのようですね[笑]。国会のODAに関する特別委員会に、プレゼンテーションをするために招待されたのは、これまでの日本滞在で最もハイライトになることでした。駐在国の立法府に大使が呼ばれることは非常にまれです。ケニアにとって非常に名誉なことでした。