Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan August 2016 > オリンピック・パラリンピックで活きる日本の知恵

Highlighting JAPAN

レスリングを通じた国際交流

4大会連続でオリンピックの金メダルを獲得している女子レスリングの伊調馨選手は、レスリングを通じた国際交流を実践している。

6月28日、東京都内のホテルで、スポーツ功労者の顕彰式・表彰式が開催され、今年度は選手、指導者、団体、審判員など計480名が受賞した。受賞者の中の一人には、これまで3つの金メダルを獲得しており、リオデジャネイロ・オリンピックの女子レスリング58キロ級に出場する伊調馨選手もいた(その後、リオ大会で伊調選手は4つめの金メダルを獲得)。伊調選手はオリンピックの有力なメダル候補の一人ということもあり、表彰式後には、数多くの記者に囲まれていた。

「レスリングの魅力は、相手との駆け引きや、身体一つで勝負ができるところです」と伊調選手は言う。「とても楽しいスポーツです」

身長166センチと、日本人女性としては長身だが、平服を着た伊調選手は普通の人に見える。しかし、ユニフォームでレスリングのマットに立つと、世界の女子レスリング選手の中で、圧倒的な成績を残してきた。

伊調選手がレスリングを始めたのは、3歳の頃という。3歳年上の姉、千春さんと7歳年上の兄について、青森県八戸市のレスリングクラブに通い始めた。姉妹は中学、高校、大学と進む中で、全国大会で優勝するレベルの実力を身に付けていった。女子レスリングが初めてオリンピックの正式種目になった2004年のアテネ・オリンピックに姉妹は2人揃って出場、伊調選手は63キロ級で金メダル、千春さんは48キロ級で銀メダルを獲得した。2008年の北京においても、伊調選手が金メダル、千春さんは銀メダルという成績を残した。その後、千春さんは引退したが、伊調選手は2012年のロンドンにも出場し、金メダルを獲得した。伊調選手は世界選手権にも2002年から2015年まで10回出場しているが、全て優勝している。

「日本で暮らしていると、外国人とスポーツで戦うという機会はそれほど多くありません」と伊調選手は言う。「海外の試合に出場すると、アジア人、欧米人など国や人種によって、レスリングのスタイルが全く異なることを実感できます。それは非常に面白い経験です」

伊調選手は約15年にわたってほぼ毎年、海外の国際大会で試合を続けてきた。伊調選手はレスリングだけではなく、それぞれの外国人選手の国の文化にも高い関心を寄せている。試合や練習以外の場で、外国人選手と語り合うことは海外での楽しみとなっている。

こうした伊調選手の経験や活躍ぶりから、文部科学大臣は、10月に京都と東京で開催されるスポーツ・文化・ワールド・フォーラムのアンバサダーへの就任を依頼し、伊調選手は快諾した。アンバサダーは、フォーラムを多くの人に広めるメッセンジャーの役割を担う。

「アンバサダーとして、スポーツの発展に協力したいです。それが自分自身にとっても、意義のあることだと考えています」と伊調選手は言う。「これまで、多くの人に教えて頂いた技術やトレーニング方法を、多くの人に伝えていく責任を感じています。そのためにも今後、世界の中のどのような人ともコミュニケーションがとれる能力を磨いていきたいです」