Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan September 2016 > 日本の地球温暖化対策

Highlighting JAPAN

緑と心を育むエコスクール

山梨県の押原小学校では環境に配慮した校舎を活用して、児童への質の高い環境教育が提供されている。

地球温暖化が世界的な課題となる中、文部科学省が中心となり、太陽光発電や省エネルギー施設が設置された、環境に配慮した学校「エコスクール」の整備が全国各地の学校で進められている。

エコスクールは2015年までに約1600の幼稚園、小学校、中学校、高校が認定されているが、その中でも特に環境配慮のための施設が充実している学校の一つが、山梨県の昭和町立押原小学校である。

1884年に開校した押原小学校は、「環境と共存する町づくり」という昭和町の方針に基づき、2004年にエコスクールとして校舎を建て替えた。

押原小学校は四方を山に囲まれた甲府盆地のほぼ中央にある。夏は暑く、冬は寒いという盆地特有の気候の中で、冷暖房に頼らないために、押原小学校は様々な設備を導入している。例えば、アースチューブと呼ばれる地中に埋めたチューブを通して、外気を室内に取り込んでいる。地中の温度は外気温に比べ夏は低く、冬は高いので、自然の冷暖房となる。また、地下水をパイプ内で循環させて空気を冷やす輻射冷房や、夏の夜に校舎の上部の換気口を開けることで、冷たい空気を取り込むナイトパージも設置されている。

さらに、直射日光や照り返しが教室に入らないように、教室の外には木製のテラスと庇が作られている。その他、校舎の屋上やテラスの緑化、緑のカーテン、校舎や体育館の屋根に地下水やタンクに溜めた雨水を撒くことで、温度の上昇を防いでいる。

「夏の間、少ない冷房でも、非常に快適に過ごすことができます」と押原小学校の太田充校長は言う。「この快適さを電力で達成するとしたら、非常に大きな電力が必要になると思います」

押原小学校では、冷暖房用のエネルギーを減らす設備以外にも、様々な省エネルギーの工夫がされている。例えば、教室の上部に窓(ハイサイドライト)を取り付けることで、直射日光を防ぎつつ、自然光が取り入れられるようになっている。天気の良い日中は電気を点けなくても、教室の中は十分に明るい。また、タンクに溜めた雨水を、トイレを流す水や樹木への散水に使っている。

正門入口から校舎に沿って約150メートルにわたって伸びているビオトープの水も地下水が使われている。ビオトープには、青々とした水草が茂り、メダカやザリガニなどが生息しており、児童が自然に触れる場所にもなっている。

押原小学校では、こうした設備を使って、児童に環境教育を行っている。例えば、4年生の社会で水資源について学ぶとき、校内での井戸水や雨水の利用を教える。また、6年生の理科で、電気について学ぶときは、校内に設置された風力発電や太陽光発電が活用される。校舎の1階には、タッチパネル方式の液晶モニターが設置されており、校内の太陽光発電や風力発電の発電量、井戸水や雨水を利用している量、屋上緑化の効果などの情報を知ることができる。

「学校の建物自体が環境教育の教材なのです」と太田校長は言う。「児童は、自分たちの学校が地球の環境に配慮した素晴らしい学校であるということを学びます。それによって、エネルギーを無駄にしない、自然環境を大切にするといった心が、自然と育まれていきます」