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Highlighting JAPAN

九州を味わう

四方を海に囲まれ古くから諸外国と交わりのあった九州。豊富な水産資源を活用した料理が多いほか、カステラ(元々はスペインで生まれた焼き菓子)など外来文化の影響を受けた味、封建時代から受け継がれる味など、九州には地域ごとに根差した味があり、バラエティに富んでいる。また、日本の南に位置し暑いことから、保存性を高めるように工夫され、南国の知恵や工夫が活きている食品もある。以下では、九州7県について、1県につき1品名物料理を紹介する。

おきゅうと(福岡県)
おきゅうとは干した「エゴノリ」という海藻を煮込んで裏ごしし、冷やし固めた食品。食物繊維やミネラル類が豊富で、カロリーはほぼ0である。細長く切り、すりおろした生姜を薬味に、かつお節、醤油や酢醤油をかけていただく。
江戸時代(1603-1867)から食べられている「おきゅうと」は、福岡の博多では現在でも朝食でよく食べられているという。昔は小学生が小遣い稼ぎに売ったそうだ。

須古寿司(佐賀県)
須古寿司は500年以上の歴史があるといわれる押し寿司。「もろぶた」と呼ばれる木箱の中で、正方形に切り分けた餅米入りの酢飯の上に、ムツゴロウの蒲焼や漬物のほか、錦糸卵、エビなどの具材を彩り豊かに飾り付ける。寿司の一つ一つは田を、丸く盛られた錦糸卵は満月を表しているという。領民が領主に献上したのが始まりといわれ、現在でもお祝いの日のご馳走として食されている。

からすみ(長崎県)
からすみは塩漬けしたボラの卵(卵巣)を天日で干して自然乾燥させると、べっこう色に輝く「からすみ」となる。「からすみ」は16世紀末から17世紀初頭にサワラの卵で作るものとして海外から伝来したが、長崎では近海に多く生息するボラの卵で作られるようになった。血抜きから乾燥まで丁寧な仕事をしないと、美しいべっこう色にはならないという。

馬肉料理(熊本県)
馬刺しは馬肉の刺身。スライスした馬の生肉を、おろし生姜やおろしニンニク、ネギなどの薬味、生の薄切りタマネギと合わせ、甘口の醤油で食べる。熊本を治める大名、加藤清正(1562-1611)が馬肉を食す文化を熊本に広めたと言われるが、第二次大戦後に、馬刺のほか、焼肉や燻製、鍋などにして食べる習慣が庶民の間に根付いたという。

とり天(大分県)
とり天は鶏肉の天ぷら。鶏肉消費量が全国1位の大分県の県民食。鶏肉に下味をつけ、粉をまぶして揚げ、揚げたてを辛子とタレにつけて食べる。家庭で作られるのはもちろん、レストラン、居酒屋、中華料理店、喫茶店、弁当屋と、とり天を食べられる店は実に多い。店によって味付けや揚げ方が異なり、味わいはさまざま。

冷や汁(宮崎県)
冷や汁は具入りの冷たい汁を飯にかけて食す、素朴だが滋養豊富な郷土食。
炙ってほぐした魚の身と味噌をと合わせ、すり鉢ですりつぶして焼く。それを冷えただし汁で溶き、輪切りにしたきゅうり、ほぐした豆腐、大葉、胡麻などを入れてご飯にかければできあがりだ。
夏の暑さ厳しいなか、農作業の合間に手早く食べられ、エネルギーを素早く補給できるよう工夫された食である。

つけあげ(鹿児島県)
つけあげは、魚のすり身に野菜などを混ぜたものを油で揚げた食品。全国的には『さつまあげ』として知られるように、かつて「薩摩」と呼ばれた鹿児島県が発祥だ。鹿児島の「つけあげ」は、味が甘いのが特徴。すり身に甘みのある地酒や、黒砂糖を多めに入れて作る。砂糖を入れることで保存性を高めるほか、昔は砂糖そのものが貴重だったため、賓客をもてなす意味があったとされる。