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Highlighting JAPAN

難民への対応:共存と包括を支援

日本は、国際機関を通じて、難民と受入れ国・コミュニティに対する様々な支援を実施している。

2011年にシリアで紛争が勃発して以来、中東における難民が急増している。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、レバノン、ヨルダン、イラクなどの国々に避難したシリア難民は約480万人、国内避難民も約650万人に達した。

シリア及び周辺国における難民問題に貢献するため、日本はこれまで総額16.5億ドル以上の支援を行っている。安倍晋三首相は2016年9月に行われた「難民に関する国連サミット」において、日本の支援の特徴について、「緊急的な人道支援に加え、難民の自立や受入国の経済発展を支える開発支援を並行して進める」と述べている。日本はこのようなアプローチを「人道と開発の連携」と呼んでいる。

こうしたシリア及び周辺国における日本の支援の多くは、国連機関と連携して実施されている。例えば、日本は 2014年から2016年にかけてUN Womenがヨルダン、イラク、レバノン、シリア、エジプトで実施したプロジェクト「Economic Empowerment of Syrian Women Refugee」に対して、総額300万ドルを支援している。プロジェクトの柱の一つは、女性コミュニティー・センターへの支援である。

「難民の中でも女性は、非常に脆弱な立場に置かれています」とUN Women日本事務所の結城直子氏は言う。「難民の女性が安心して集える場所が必要なのです」

コミュニティー・センターでは女性の経済的自立を支援するために、様々な職業訓練が行われている。エジプトにおいて、UN Womenは地元NGOと協力して、シリア人とエジプト人の女性に対する職業訓練を行っている。これは、女性の能力向上とともに、脆弱な立場に置かれた女性同士の異文化交流にもつながっている。

また、プロジェクトの一環として、UN Womenは難民女性に仕事を提供して賃金を支払う「キャッシュ・フォー・ワーク」も実施している。例えば、ヨルダンのザアタリ難民キャンプでは、シリア人女性が学校の制服やベビー服の裁縫や仕立ての仕事に従事している。4か国で行われた「キャッシュ・フォー・ワーク」を通じて、900人以上の女性が賃金を得たことで、約3万人の家族が恩恵を受けた。

日本は、国連開発計画(UNDP)を通じてレバノンにおける農業支援をしている。UNDPは100万ドルの日本からの支援を活用し、多くのシリア難民を受け入れている北東部のベッカー県カッブエリアス村に、約11キロの長さの農業用水路を2016年9月に完成させた。用水路の設置にあたっては、シリア人難民約800名が雇用され、村の農民や住民1,100人が恩恵を受けた。

用水路によって、農地への水の供給速度・量が向上し、農産物の生産性向上、農民の生計向上につながることが期待される。こうした支援は、難民の受入れによって大きな負荷がかかっている地域の社会的な安定に重要な役割を果たすことになる。

日本はレバノンでUNHCRが運営する7つのコミュニティー・センターの支援も行っている。シリア難民だけではなく、レバノン人にも利用されているコミュニティー・センターでは、職業訓練の他、子どもや脆弱な人々に対する教育が実施されている。

2016年6月にUNHCRが発表した「Global Trends 2015」によれば、2015年末時点で、紛争や迫害によって家を追われた人は過去最多の6530万人に達した。その人口の過半数の出身国は、シリア、アフガニスタン、ソマリアの3か国で占められている。安倍首相は9月の「難民に関する国連サミット」で、2016年から3年間で総額28億ドル規模の難民・移民への人道支援、自立支援及び受入国・コミュニティ支援を行うこと及び前述の「人道と開発の連携」を促進していくことを表明している。

日本は、難民とその受入れ国の国民との共存を支援し、脆弱な立場にいる人を出身国に関わらず包摂的に支援するという理念に基づいて難民支援を行っている。日本は約束したことは必ず実行すると、難民支援を行う国連機関から評価されており、日本への信頼感は非常に高い。今後も難民及び受入国・コミュニティ支援を継続的に実施していく方針だ。